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ドナルド・キーン氏、ヤナーチェクを語る

Keene
日本文学研究の世界的権威で、東日本大震災を機に我が国への永住を決めたドナルド・キーンさんが、一昨日、日本に到着したとのニュースを読んだ。私も日本文化の魅力を”ガイジン”であったキーンさんの著作から随分教わった一人なので、今回の帰化については本当に有り難く思う。

キーンさんはクラシック音楽にも造詣が深く、とりわけマリア・カラスのファンとして知られ、何冊か音楽関係のエッセイを出している。その中から、キーンさんがヤナーチェクについて語ったくだりを紹介したい。

次に触れなければならない作品は、ヤナーチェクの『グラゴール・ミサ』である。この曲については、音楽そのものは知らぬまま、その奇妙な題名だけは昔から知っていた。今回初めてその音楽に接していたく感動し、たて続けに四回も聴いてしまった。そのノイマンとチェコ・フィルによるレコードは実に素晴らしい。この歳になるまで、こんなすごい音楽を知らずにいたなんて、とても信じられない話ではないか。

(ドナルド・キーン著『音楽の出会いとよろこび 続音楽風刺花伝』 中矢一義訳 音楽之友社、「宗教音楽」1979 より)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

『中国の不思議な役人』組曲のポケットスコア

中国の不思議な役人
全音楽譜出版社からバルトークの『中国の不思議な役人』組曲のポケットスコアが発売された。これは先日の記事で紹介したバルトーク・レコーズ・ジャパンの代表、村上泰裕氏の解説・校訂によるものだ。


ゼンオンスコア
バルトーク:《中国の不思議な役人》組曲


村上泰裕・渡辺純一 校訂
A5判/176頁
価格:2415円(本体2300円)(税込)
JAN:4511005075680
ISBN:ISBN978-4-11-892530-1

ポケット・スコアとしては世界初出版となるベーラ・バルトークの傑作『中国の不思議な役人』の演奏会用組曲のスコアです。
世界中で広く演奏されている「組曲」ですが、スコアの出版は、作品が作られた初期に発行された指揮者用の大型判を除いてはこれまで全くありませんでした。

今回、作曲者の次男で録音技術者として知られるペーテル(ピーター)・バルトークと交流のある校訂者によって、最新の最も信頼できるスコアが完成しました。
校訂者による作曲の背景,ドラマのあら筋,上演の経緯などの詳細な解説およびスコアの校訂報告を、自筆スコアの資料などを添えて掲載しています。(出版社のページから引用)



これは渾身の労作だ。

『中国の不思議な役人』は1幕のパントマイムのために書かれたバルトーク円熟期の傑作。その筋書きは、金品を奪うよう3人の悪党から強いられた少女が辮髪姿のマンダリン(中国の官吏)を誘惑し、3人とともに嬲り殺しにするが、欲情したマンダリンは少女を求めて何度も立ち上がるというもの。

この作品は、グロテスクで暴力的な内容から長く偏見にさらされ、バルトークの作品のなかでも特に不遇であり、楽譜にも不完全な版が慣用されるなど問題が多かった。また、一般の愛好家にも管弦楽のための協奏曲のようなとっつき良さがないため比較的人気がなかったと思う。

私も、これまでバルトーク独特の強烈な響きに痺れながらもパントマイムの筋をよく理解して聴いているわけではなかったので、各場面を譜例を示し詳細に解説した本書は大いに有り難かった。原作のあらすじや作品成立の経緯、我が国における受容等の情報が充実し、詳細な校訂報告も添えられているので学術的な価値も高いと思う。ポケットスコアには海外楽譜のリプリントと思われる印刷の荒いものも少なくないが、スコアも美しく見やすい。これは本当におすすめの一冊だ。

本書はこの作品のポケット・スコアとしては世界初になるため英文解説も添えられている。世界レベルの一冊を狙った山形のBartokianの情熱には心から脱帽する。北海道のJanáčekianも頑張らなければ。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

巨匠マッケラス逝く

mackerras


巨匠サー・チャールズ・マッケラスが、7月14日、癌のためロンドンで亡くなった。享年84歳。

言うまでもなくヤナーチェキアンにとってヤナーチェク演奏の大家マッケラスは特別な存在だ。今日ヤナーチェクの作品が国際的に受容されているのもマッケラスの優れた演奏によるところが大きい。また、知的に旺盛でチェコ語も含め複数の言語に堪能だった彼は、ヤナーチェク研究の権威ジョン・ティレル教授と協同して楽譜の校訂などを行い、学術的にも多大な貢献をした。

マッケラスの演奏は、溌剌としたリズムのキレが特徴的で、オケを明晰に鳴らす芸はもとよりオペラなどでの呼吸感も素晴らしいものだった。こうした個性は『利口な女狐の物語』で最大限発揮され、デッカへの録音はポップの名唱とともに歴史的な名盤となった。

またヤナーチェク、チェコ音楽ばかりでなく、バロックから古典派、ロマン派、英国音楽など幅広いレパートリーで一級の演奏を聴かせた。特に手兵スコットランド室内管を振った晩年の録音は、創意と気力が漲る見事な演奏だと思う。

ここ数年、老齢による体調不良が伝えられていたが近頃まで録音がリリースされており楽観していた。録音を聴く限り衰えを感じさせない充実した活動をしていただけに、この悲報はファンとして大変残念だ。今年3月のコヴェントガーデンにおける『利口な女狐の物語』が最後の仕事だった。謹んでご冥福をお祈りしたい。

※以下に私のお気に入りのマッケラスの録音を挙げる。

ヤナーチェク:『利口な女狐の物語』/VPO(Decca)
ヤナーチェク:『死者の家から』/VPO (Decca)
マルチヌー:歌劇『ジュリエッタ』からの3つの断章他/CPO、コジェナー、他 (Supraphon)
ブラームス:交響曲全集/スコットランド室内管(Telarc)
ベートーヴェン:交響曲全集 /スコットランド室内管、フィルハーモニア管(Hyperion)
モーツァルト:後期交響曲全集/スコットランド室内管(Linn Records)
ディーリアス:アパラチア、高い丘の歌他 ウェールズ・ナショナル・オペラ管/(Decca)


※それにしても、マッケラスによる『ブロウチェク氏の旅』の録音がないのは残念だ。彼はこの作品をヤナーチェク生誕150周年である2004年にプラハ国民劇場で振っているが、ライヴ録音はないものだろうか。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

武満徹の「ファミリー・トゥリー(系図)」

先の日曜の晩、選挙特番に飽きてチャンネルを切り替えたらN響アワーで武満徹の特集をやっていた。題して「武満徹と映画音楽」。しまった、こちらを観ればよかったとすぐに思った。放送された曲目は次の通り。

ノスタルジア
 ~アンドレイ・タルコフスキーの追憶に~ ( 武満徹 作曲 )
バイオリン: 堀 正文
指揮: 尾高 忠明
[ 収録: 2010年5月14日, NHKホール ]

3つの映画音楽 ( 武満徹 作曲 )
指揮: 広上 淳一
[ 収録: 2010年1月20日, サントリーホール ]
 
「ファミリー・トゥリー (系図)」 から
 「むかしむかし」「おかあさん」「とおく」 ( 詩:谷川俊太郎 / 武満徹 作曲 )
語り: 遠野なぎこ
アコーディオン: 御喜美江
指揮: シャルル・デュトワ
[ 収録: 1997年6月18日, NHKホール ]
管弦楽 :NHK交響楽団


私が観始めたのは、「3つの映画音楽」の後半からで、広上淳一のやんちゃな指揮ぶりを面白く眺めていたが、次の「ファミリー・トゥリー (系図)」 にはすっかり参ってしまった。

これは詩のナレーションが付随する6曲20分ほどのオーケストラ曲で、武満の合唱曲(「小さな空」等)のように少々臆面もないほどに沁みるような感傷性を含んでいる。終曲にはアコーディオンが加わるが、これは武満がジム・ジャームッシュの映画「ナイト・オン・ザ・プラネット」のために書いたが結局ボツになってしまった曲を挿入したもので、郷愁を感じさせる甘いメロディは武満のお気に入りだったという。こういう音楽を好きだというのは少々照れ臭いのだが、オケの精妙で色彩的な響きと、思春期の少女独特の不安定さと集中力を感じさせる遠野なぎこの見事なナレーションにノックアウトされてしまった。この作品には映像もあるらしく番組でも一部が紹介されていた。

早速、CDを探して取り寄せた。

●武満徹:系図(ファミリー・トゥリー) -若い人たちのための音楽詩-
岩城宏之指揮 オーケストラ・アンサンブル金沢
ワーナーミュージック・ジャパン

この録音のナレーションは吉行和子。さすがに巧いが少々朗読調で、少女の声のようなどきりとするような生々しさはなく、遠野なぎこを聴いた後では正直物足りない。オーケストラ・アンサンブル金沢の室内楽的な響きは十分美しく(※オーケストラ・アンサンブル金沢に合わせ岩城が小編成用に編曲している。)、岩城の指揮もデュトワに比べるとずっと情緒的な共感があって良いのだが。

この作品は、変則3管という編成の大きさにもかかわらず(ブルックナー、マーラー級の規模)、水彩画のような透明感が特徴的なので、ライヴで聴くとまた印象が変わるだろう。いつか実演に接してみたいものだ。今ならナレーションは誰がいいだろう。成海璃子、いや多部未華子だろうか。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

シベリウス入門

シベリウスは、長年、波長の合わない作曲家でした。抒情的で牧歌的な旋律、透明感のある心地よい響き。聴いていて不快になる要素は何も無いのだが、臆面もなく長い呼吸の音楽に少々鼻白むような印象をずっと持っていました。

私の知人には熱烈な北欧好きが多く、シベリウスの作曲年代はヤナーチェクと重なるため、北欧音楽と中欧音楽との比較という点でも、彼の音楽には興味があり、以前から名曲の誉れ高い交響曲くらいは理解したいと、幾度とトライしていました。しかし、なかなか腑に落ちず、ヤナーチェクのような、せっかちで呼吸が短い音楽を愛好する自分には縁がないのかと思っていました。しかし、最近になってようやっと耳に馴染んできました。

きっかけはNAXOSによるペトリ・サカリ盤です。これはアイスランド(!)のオケの響きの素朴な味が好ましく、初心者にも比較的分かりやすい解釈のように思えます。この冬は、この録音をiPodに仕込み、片道徒歩20分の通勤時、雪道と寒風に耐えながら、毎日、繰り返し聴いていました。お陰で、寒さがゆるむ3月には、私もシベリウス・ファンの仲間入り。確かに4番以降の交響曲は充実していますね。

●シベリウス:交響曲1~7番/ペトル・サカリ指揮、アイスランド響(NAXOS)

これを皮切りに、幾つか録音を聴き漁っています。シベリウスの音楽の味わいは、構造的・造形的なものより、響きのニュアンスによっている部分が大きいため、演奏により随分と印象が変わり、その分、聴き比べの楽しみが大きいようです。

例えばカラヤン盤(EMI)で聴くと後期ロマン風もったりと響く音楽が、コリン・ディヴィス盤(RCA)だと、爽やかな繊細さが際立ち、まるで別物のよう。シベリウスも含め北欧音楽はとにかく「透明感」がキーワードとして語られますが、カラヤン、ディヴィスとサカリのそれでは、当然ながら随分種類の違う印象。中欧音楽はまた違う、北欧独特の質感のバラエティが面白く、ただいま初心者ならではの発見を楽しんでいるところです。

当初は、シベリウスと言えばお国モノのべルグルンド盤(EMI)がスタンダードな演奏と思い、入門盤として何度か聴いていましたが、私には、どうも精彩を欠いた退屈な音楽のように思われました。今にしてみれば、ベルグルンドの演奏は入門者には少々分かり難いものかもしれません。シベリウス節に馴染んだ今、改めて聴くとカラヤン盤とは対照的な色気も素っ気ない質朴さに魅力を発見し、自分でも驚きます。これだから音楽を聴くと言うのは案外難しい。

そして、目下、最もお気に入りが渡辺暁雄&ヘルシンキ・フィル。これはよく言われる「北欧独特の透明感」といったイメージから大分違った渋い響きで、格調の高さは比類が無いものです。この録音は高名なシベリウス指揮者、渡邊の録音の中でも特に定評ある大名演とのことですが、今更ながら音楽家の品格に背筋が伸びる思いで聴きました。

●シベリウス:交響曲第4番、第7番 渡邊暁雄&ヘルシンキ・フィル(TDK 1982年ライヴ)

渡邊暁雄のシベリウスを聴くと作風は全く違うがブルックナーに近いものを感じます。どちらも田舎者の特異なスタイルと無防備な純情が昇華した例とでもいうのでしょうか。どちらも一度好きになるとはまり込むが、理解するまでは少々難物なのかもしれません。ヤナーチェクも強烈な田舎者ですが、こうした他に似たものがない作風の音楽を理解するには、幸運な機会と直感による他ないのでしょう。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

プロフィール

Pilsner

Author:Pilsner
発話旋律 "Speech Melody"
日本ヤナーチェク友の会公式サイト管理人Pilsnerのブログ
チェコ音楽を中心にした音楽雑記帳です。
The blog by the chief manager of Janáček Association Japan
http://twitter.com/#!/janacekjapan

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