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ジ・アート・オブ・アルド・チッコリーニを聴く

日帰りで上京し、アルド・チッコリーニのリサイタルを聴いてきた。
私がチッコリーニの実演に接するのは2003年2005年に続いて3回目、5年ぶりの再会である。

●ジ・アート・オブ・アルド・チッコリーニ
◎第1夜:リサイタル
 ・日時:2010年03月14日(日) 開演:15:00 =リサイタル
 ・会場:すみだトリフォニーホール
 ・曲目:シューベルト/ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調D.960
     ムソルグスキー/組曲≪展覧会の絵≫
(アンコール)
 エルガー:愛のあいさつ
 スカルラッティ:ソナタホ長調
 ファリャ:火祭りの踊り
  ※使用楽器:スタインウェイ


嬉しいことに、マエストロは健在だった。以前、私はチッコリーニついて「老いて深まりこそすれ枯れない巨匠」と書いたが、今回のリサイタルでも、マエストロが加齢というハンディの中、老舗の料理人が頑固に味を守るように、自身の持ち味を十分な水準に保ちつつ(彼の芸風からいえばそれだけで超人的なことだ!)、それを一層深めていることに改めて畏敬の念を覚えた。

5年前と比べて、外見にそれほど変化はなく、足取りはむしろしっかりしていた。ただ、技術的な衰えはごく僅かだがみられ、今回、使用ピアノがファツィオリではなくスタインウェイだったこともあり、音色の華やかさ(特に以前「一種の空気を醸し出すような」と評した響き)は前回より抑え気味だったように思う。しかし、それで精彩を欠いたということは全くなく、淡彩な分、響きの余韻で語るような表現が印象的だった。

シューベルトの晩年のソナタ第21番は、若い頃より彼の得意な曲であり、私は1975年の録音と1992年の映像を持っていて、これらも解釈としてはほとんど完成された名演だった。今回の演奏もその解釈から大きく外れてはいないが、淡々と噛み締めるように紡がれる音のグラデーションが見事で、シューベルト独特の異様な時間感覚に酔うことができた。特に、ある意味、単調とさえいえる2楽章において息を飲むようなタッチで惹き付け続けた演奏には鳥肌が立つ思いがした。

「展覧会の絵」はチッコリーニのピアニズムを存分に発揮した多彩な音色の万華鏡。ここでも渋く抑制された表現と、華やかな表現の対比が鮮やかで、冒頭、意外なほど朴訥に響いたプロムナードの表情が徐々に変化していくのが味わい深かった。一音一音ビーンと共鳴する音質の充実と余韻が効果的で、なにより生理的に快感だった。「テュイルリーの庭」でルバートをかけ突然ふっとフレンチ風に処理するような歌い口もチッコリーニならでは。最後の「キエフの大門」では、東方教会の巨大な鐘が鳴っているかのような印象を受けた。まさに悠然たる巨匠の芸を堪能した。

アンコールの「愛の挨拶」のリラックスした小粋なエンターテナーぶりも心憎く、続くスカルラッティは絶美の解放感だった。そして締めはやはり定番の「火祭りの踊り」。これは演奏する姿を観ているだけでも楽しく、聴衆の心を鷲掴みにしていた。おそらくマエストロは、いくつになってもこの曲をアンコールで弾き続けるのだろう。

スタンディングオベーションで喝采する聴衆に仏頂面で恭しく拝礼し、最後は淀川長治風にサヨナラと手をゆっくり振り去っていく茶目っ気あるステージマナーもあいかわらず。期待に違わぬ感動的なリサイタルだった。



※ジ・アート・オブ・アルド・チッコリーニⅡの詳細なレヴューが、畏友アリスさんのブログ「アリスの音楽館」に掲載されておりますので、是非御覧下さい。

アリスの音楽館より
アルド・チッコリーニ ベートーベン ピアノ協奏曲 ジ・アート・オブ・チッコリーニⅡ 3/16
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