Moravian Gems(モラヴィアの宝石)
先日紹介したSinfonietta - The Janáček of Jazzが気に入ったので、ヴィクリツキーがモラヴィア民謡を素材にしたもう一枚のアルバムを聴いてみた。

Moravian Gems(モラヴィアの宝石)
1 Destiny / Osud / 運命(「モラヴィア民謡の花束」から)
2 Austerlitz / Slavkov(ヴィクリツキーのオリジナル)
3 Oh Love, Love / Ej lásko, lásko / 愛よ (「モラヴィア民謡の花束」収録)
4 Pennyroyal / Polajka / ハッカ油 (「モラヴィア民謡の花束」収録)
5 A little bird’s flown over / Preletěl ftáček(ヴィクリツキーのオリジナル)
6 Walking from Peszt / Keď som išiel z Pešti
7 Sinfonietta/ シンフォニエッタ
8 Dying of Love / Láskou zhynulý/
9 Little Apple / Jabúčko/ リンゴ(「モラヴィア民謡の花束」収録)
10 In the Town of Olomouc / V Holomóci městě(ヴィクリツキーのオリジナル)
11 Fetching Water / Išlo dievča pro vodu/
12 Sweet Basil / Bazalička(ヴィクリツキーのオリジナル)
13 A Little Wreath / Věneček/
14 Gossip / Pomluva/
George Mraz /bass
Iva Bittová / vocals & violin
Emil Viklický / piano
Laco Tropp /drums
Cube-Metier MJCD2736
これは2007年の録音でエミル・ヴィクリツキー、ジョージ・ムラツに加え、イヴァ・ビットヴァーが参加している。モラヴィア民謡とジャズの融合というコンセプトはSinfonietta - The Janáček of Jazzと同様で、14曲中、9曲は民謡、うち4曲はヤナーチェクの「モラヴィア民謡の花束」からのものだ。Sinfonietta - The Janáček of Jazzは、このアルバムの続編で、発売にあたり1Q84によるシンフォニエッタ人気を汲んでこのアルバムに収録されているSinfoniettaを追加し、タイトルとしたらしい。
モラヴィア出身のイヴァ・ビットヴァー(Iva Bittová)は、演劇、映画、音楽等、多方面で活躍するアーチストで、独特の発声による歌唱に加え、ヴァイオリン演奏や作曲も行い、演劇で培ったパフォーマンスも活かして、クラシックからポピュラーまで幅広い分野のアーチストと共演している。このような彼女の多才さは著名なロマの芸能一家の出身であることに由来している。
ビットヴァーは、ヤナーチェクのモラヴィア民俗詩をシュカンパSQとの共演によりSupraphonに録音しており、以前ここでも紹介した。この録音はビットヴァーの癖の強い歌唱が良くも悪くも印象的で、確かにユニークな演奏だが、ロマの芸能色が濃く、面白さの反面、民謡本来の素朴な味わいを損なっているようにも思えた。ピアノ伴奏による行儀の良い編曲と違い、民俗舞踊の身体性や芸能性が感じられたのは発見だったが、あまりにも芸達者すぎてわざとらしく鼻につくのだ。
しかし、ここでのビットヴァーの歌唱は、シュカンパSQとの録音より、しっとりとした基調のジャズ編曲に良く馴染んでおり、民謡調のバラードをざらりと歌ったかと思うと、ジャジーなスキャットを自由に交えるなど、この人ならではの変幻自在な芸が活きていて楽しめた。
個性的なビットヴァー以上に素晴らしいのがムラツのベースで、濃密な空気を漂わせる繊細な表情にはモラヴィアの土臭さも十分で、格別の存在感がある。
そして、そこにヴィクリツキーの軽めのピアノが絡み、哀愁と幻想味がただようモラヴィア民謡の持ち味を生かした絶妙な共演となっている。この人のピアノは、都会な洗練と土臭い情感の豊かさを備え、そのバランスに優れている。
これは本当に魅力的なアルバムで、ジャズファンのみならずクラシックファンにも強くアピールするだろう。既に希少盤になっているようだが、モラヴィア民謡のスピリットを昇華した名盤として、多くの方に聴いていただきたいと思う。

Moravian Gems(モラヴィアの宝石)
1 Destiny / Osud / 運命(「モラヴィア民謡の花束」から)
2 Austerlitz / Slavkov(ヴィクリツキーのオリジナル)
3 Oh Love, Love / Ej lásko, lásko / 愛よ (「モラヴィア民謡の花束」収録)
4 Pennyroyal / Polajka / ハッカ油 (「モラヴィア民謡の花束」収録)
5 A little bird’s flown over / Preletěl ftáček(ヴィクリツキーのオリジナル)
6 Walking from Peszt / Keď som išiel z Pešti
7 Sinfonietta/ シンフォニエッタ
8 Dying of Love / Láskou zhynulý/
9 Little Apple / Jabúčko/ リンゴ(「モラヴィア民謡の花束」収録)
10 In the Town of Olomouc / V Holomóci městě(ヴィクリツキーのオリジナル)
11 Fetching Water / Išlo dievča pro vodu/
12 Sweet Basil / Bazalička(ヴィクリツキーのオリジナル)
13 A Little Wreath / Věneček/
14 Gossip / Pomluva/
George Mraz /bass
Iva Bittová / vocals & violin
Emil Viklický / piano
Laco Tropp /drums
Cube-Metier MJCD2736
これは2007年の録音でエミル・ヴィクリツキー、ジョージ・ムラツに加え、イヴァ・ビットヴァーが参加している。モラヴィア民謡とジャズの融合というコンセプトはSinfonietta - The Janáček of Jazzと同様で、14曲中、9曲は民謡、うち4曲はヤナーチェクの「モラヴィア民謡の花束」からのものだ。Sinfonietta - The Janáček of Jazzは、このアルバムの続編で、発売にあたり1Q84によるシンフォニエッタ人気を汲んでこのアルバムに収録されているSinfoniettaを追加し、タイトルとしたらしい。
モラヴィア出身のイヴァ・ビットヴァー(Iva Bittová)は、演劇、映画、音楽等、多方面で活躍するアーチストで、独特の発声による歌唱に加え、ヴァイオリン演奏や作曲も行い、演劇で培ったパフォーマンスも活かして、クラシックからポピュラーまで幅広い分野のアーチストと共演している。このような彼女の多才さは著名なロマの芸能一家の出身であることに由来している。
ビットヴァーは、ヤナーチェクのモラヴィア民俗詩をシュカンパSQとの共演によりSupraphonに録音しており、以前ここでも紹介した。この録音はビットヴァーの癖の強い歌唱が良くも悪くも印象的で、確かにユニークな演奏だが、ロマの芸能色が濃く、面白さの反面、民謡本来の素朴な味わいを損なっているようにも思えた。ピアノ伴奏による行儀の良い編曲と違い、民俗舞踊の身体性や芸能性が感じられたのは発見だったが、あまりにも芸達者すぎてわざとらしく鼻につくのだ。
しかし、ここでのビットヴァーの歌唱は、シュカンパSQとの録音より、しっとりとした基調のジャズ編曲に良く馴染んでおり、民謡調のバラードをざらりと歌ったかと思うと、ジャジーなスキャットを自由に交えるなど、この人ならではの変幻自在な芸が活きていて楽しめた。
個性的なビットヴァー以上に素晴らしいのがムラツのベースで、濃密な空気を漂わせる繊細な表情にはモラヴィアの土臭さも十分で、格別の存在感がある。
そして、そこにヴィクリツキーの軽めのピアノが絡み、哀愁と幻想味がただようモラヴィア民謡の持ち味を生かした絶妙な共演となっている。この人のピアノは、都会な洗練と土臭い情感の豊かさを備え、そのバランスに優れている。
これは本当に魅力的なアルバムで、ジャズファンのみならずクラシックファンにも強くアピールするだろう。既に希少盤になっているようだが、モラヴィア民謡のスピリットを昇華した名盤として、多くの方に聴いていただきたいと思う。
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