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事業仕分けとオーケストラの危機

いよいよ今度の日曜日(12/6)、東京交響楽団によりヤナーチェクの傑作オペラ『ブロウチェク氏の旅』が日本初演される。当会の9冊目の出版物となる『ブロウチェク氏の旅』対訳解説書も本日無事完成し、当日、会場のサントリーホールで販売される予定だ。以前ここでも記したとおり、この作品は魅力だが実に厄介な面があり、今回の編集はこれまで以上に難儀だった。そのため刊行が遅れ、記念すべき初演のための予習に間に合わなかったことをお詫びしたい。しかし、内容は200ページ近くに及ぶ充実したものになった。ヤナーチェキアンの、ヤナーチェキアンによる、ヤナーチェキアンのための解説書を自負している。どうぞ御期待下さい。

さて、首題についてだが、先ほど『ブロウチェク』を振る指揮者、飯森範親氏のブログをチェックしたところ、以下のような記事がアップされていた。

例の事業仕分けで日本のオーケストラが大変なことに・・・(12/2)
http://blog.goo.ne.jp/chef-norichika/e/0fbbe6193a25ea6af59e7044e9eabe62

事業仕分けによる予算縮減の波が様々な分野に及んでいるのは当然聞いていたが、オーケストラの運営に深刻な影響を与えることは、このブログで初めて知った。

この問題については札幌交響楽団のチェリストである荒木均氏がブログでより細かな事情を記している。

「事業仕分け」と道の予算削減 & 追伸(12/1)
http://blog.livedoor.jp/arakihitoshi/archives/51321021.html

切羽詰ってます。(12/2)
http://blog.livedoor.jp/arakihitoshi/archives/51331213.html

荒木氏のブログによると今回の事業仕分けにより結論されたポイントは以下の2点である。
①オーケストラへの助成金の大幅な削減
 (日本芸術文化振興会への文化庁交付金への圧倒的な縮減)
②オーケストラの学校派遣の実質廃止
 (本物の舞台芸術体験事業からの国の撤退)

これについて”仕分け人”のコメントは、以下の通り。
・ 芸術文化に数百億円の国費を投入する以上、いつの時点で投入額をゼロにできるのか、見通しを示せ。
・ 国が子供のためだけに事業をすることは必然性に欠ける。地方自治体で実施すべき。
・ 文化の振興という数値では図れない事業の必要性は否定しないが、効果説明が不足でばらまきの批判を抑えるものではない。
・芸術は自己責任。日本独自の洗練された文化レベル・芸術性が通用するのであれば、しっかりし たマーケティングで興行可能。
・人材育成は不要。各コンテストの副賞等で有望な人材は留学している。交流事業については、外務省と重複しており、国全体としては縮減すべき。
・伝統文化は地方が良く知っている。国がやる必要はない。
・細やかな補助事業でもあり、現実的には地域の教育委員会がサポートしているので、地方に任せればよい。

まず縮減ありきで、芸術文化に対する理解があまりにかけている発言に、怒りを通り越して呆れてしまう。

私はここであまり政治的な主張はしたくないのだが、あまりに由々しい事態なのであえて書きたい。これは無論、私個人の意見であり、当会としての見解ではない。

まずオケの価値を興行的な収支だけで測るのは全くピントはずれだ。助成を打ち切ることでオケがつぶれたら、空っぽになったホールはどうするのか。大変な経済損失だろう。ソフト抜きのハードは価値をなさない。経済的な評価をするならばもっと総体的に検討すべきだ。

私の友人にも札響を聴きにわざわざ本州から来られる方がいる。Kitaraで音楽を聴き、ファイターズ戦を観て、酒を飲む。こういう経済効果はどう評価するのか。私自身にとっても毎月の定期が貴重な祝祭となっている。ウィーン・フィルやベルリン・フィルでさえ単純に興行収支だけみれば立ち行かないだろう。オケは都市にとって文化的なインフラだ。

経営の悪い日本のオケが潰れても、集客力のある外来公演がホールを利用すると言われるかもしれない。しかし、地元のオケの定期は外来オケの公演とは違った特別な価値がある。常食の質は生活の豊かさを左右する。たまに行くレストランよりも、近所にある気の利いた定食屋の方が有難いもの。こういうアメニティは単純な収支では測れない。

そして、学校派遣の実質廃止は、地域におけるオケの公益的な役割を損ない、”仕分け人”が要求しているオケの自助努力の機会を奪うものだ。私も含め学校の学習演奏会で生オケの魅力を知ったという音楽愛好家は多い。ライブの音の魅力は体験しないと決して分からない。CDなど彫刻を写真で鑑賞するようなものだ。財政状態が厳しい地方に、もっとも採算性の測りにくい部分を転嫁するならば、文化面での地域格差は一層広がるだろう。いまさら”情操教育の重要性”を訴えても無情な”仕分け人”には通じないだろうが、こうして浮かせた金を高校無償化に使うなど、文化的な環境が教育の質を支えていることを無視した、本末転倒のバラマキというしかない。

この件は飯森氏のブログを読むまで全く知らず、まだネットでも話題になっていないようだ。これは音楽愛好家としては看過できない問題で、より注目されるべきと思う。今後も動向を注視し、声をあげていきたい。


※この件も含め、事業仕分けについて文部科学省が一般からの意見募集を行っているため、今なら個人として異議を唱えることができる。期限は12月15日 意見投稿の要領については前述した荒木氏のブログにも記されている。
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