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ヤナーチェク・オペラの管弦楽編曲版

ナクソスより「ヤナーチェクのオペラからの管弦楽編曲集」が2枚リリースされた。

●ヤナーチェク:オペラからの管弦楽編曲集第1集
・歌劇『イェヌーファ』より組曲(ブレイナー編)
  夜はすでに更けて
  全ては結婚し~全てのカップルは問題を克服するだろう
  あなたは悲しくないの?イェヌーファ
  遠くて広い
  あなたの良き日を神は祝福し
  みんな行ってしまった~あなたも行きなさい
・歌劇『ブロウチェク氏の旅』より組曲(ブレイナー編)
  マシュー・ブロウチェク氏
  月が出ている
  ワルツ、他、ダンス
  地球への訪問者
  神の勇士である人々

●ヤナーチェク:オペラからの管弦楽編曲集第2集
・歌劇『カーチャ・カバノヴァー』組曲(ペーター・ブレイナー編)
 序曲/ティホン、その時あたりに・・・
 また自慢する・・・
 間奏曲と歌/嵐が近い
・歌劇『マクロプロスの秘事』組曲(ペーター・ブレイナー編)
 死は私に触れていた
 グレゴール、プルスの死因
 それは何だか変ですよね?
 私は頭が空っぽです。
 本当にあなたが大好き
 そう?

以上 
 ヴェサ=マッティ・レッパネン(ヴァイオリン)
 ニュージーランド交響楽団
 ペーター・ブレイナー(指揮)

ペーター・ブレイナーは、指揮、ピアノ、作曲、編曲をこなす多才な音楽家で、2004年のアテネオリンピックでは各国の国歌の編曲を担当し、ナクソスにビートルズのバロック風編曲をはじめとするCDを数点録音し好評を博している。そして今回は、意外なことにヤナーチェクのオペラの管弦楽編曲だ。この第1集は「レコード芸術」6月号で特選盤になっている。

ヤナーチェクのオペラを管弦楽組曲に仕立てる試みはけっして新しいものではない。ヤナーチェクのオペラ作品はオーケストレーションが個性的で、多彩な旋律がちりばめられているので、演奏効果の高いオーケストラピースとなりえる。

もっとも有名なのはターリヒ編曲による『利口な女狐の物語』組曲で、これは第1幕の音楽をそっくり管弦楽組曲にまとめたものだ。これはしばしば演奏され、4月の札響定期でもエリシュカが取り上げた

他にもオペラからの編曲版には次のような録音があった。

●ヤナーチェクオペラ管弦楽曲集
『利口な女狐の物語』組曲(フランチシェク・イーレク編)
『運命』組曲(フランチシェク・イーレク編)
『死者の家から』組曲(フランチシェク・イーレク編)

フランチシェク・イーレク指揮、チェコフィル
(Supuraphon 廃盤)

●ヤナーチェクオペラ管弦楽曲集
『利口な女狐の物語』組曲(ヴァーツフ・ターリヒ編)
『死者の家から』組曲(フランチシェク・イーレク編)
『ブロウチェク氏の旅行』組曲(ヤロスラフ・スモルカ編)
イージー・ビエロフラーヴェク指揮、プラハ交響楽団
(Supuraphon)

●ヤナーチェク管弦楽曲集
永遠の福音
ブラニークのバラード
ヴァイオリン弾きの子供
『ブロウチェク氏の旅行』組曲(ヤロスラフ・スモルカ編)
ジェファーズ(ソプラノ)、トンプソン(テノール)、ヴォルコフ(指揮)、BBCスコティッシュ響
(Hyperion)

●ヤナーチェク管弦楽曲集(+シンフォニエッタ、タラスブーリバ等)
『利口な女狐の物語』組曲(ヴァーツフ・ターリヒ編)
『マクロプロスの秘事』組曲(ホセ・セレブリエール編)
ホセ・セレブリエール指揮
チェコ国立ブルノフィルハーモニー管弦楽団
(REFERENCE RECORDINGS)

これらのオペラ編曲は、抜粋・編集的な性格のものだったが、ブレイナーは原曲を素材として自由に手を加え、娯楽的なオーケストラ曲に仕上げている。ヴォーカルパートを管楽器でなぞることにより旋律が強調され、弦の響きには厚みが加えられ、不均一で鋭いリズムはレガートで流麗に処理されて、まるで映画音楽のように化粧直しされている。そのため、ヤナーチェク独特の各声部が溶け合わない辛口の響きは失われ、点描画を塗りつぶし、輪郭線を加えたような風情となっている。

例えば『イェヌーファ』組曲の「みんな行ってしまった~あなたも行きなさい」。これはラストの2重唱で、継母が嬰児殺しの罪で連行された後、若い二人が互いの愛を確かめ合う感動的な場面だ。犯罪の影を背負う二人に対する世間の風は冷たく、厳しい行く手を予感させ、とてもハッピーエンドとは言えないため、原曲では抑制された透明感のある響きとなっている。しかし、この音楽はプラハ初演時でも物足りなく思われたのか、指揮者のカレル・コヴァジョヴィッツにより、より劇的なものに改変された。作曲者は随分不満だったと伝えられている(マッケラス盤では原典版と改編版を聴き比べることができる)。

今回のブレイナーによる編曲では、このニ重唱の甘美な旋律が強調され、楽天的にブン、チャッ、チャと刻むイージーリスニング風のワルツになっていて、これには聴いていて正直ずっこけた。

比較的成功しているのは『マクロプロスの秘事』で、序曲の前に3幕のエリナ登場の音楽が鳴り、映画音楽風の演出と編集が効果をあげている。『オペラ座の怪人』(by R・ウェバー)調の『マクロプロス』といったところか。

4月発売の第1集のナクソスの帯には、こうある。
「すっかり人口に膾炙したヤナーチェクの音楽、ここまで親しみやすくなって登場!マニア大喜び!」

確かに『1Q84』効果でヤナーチェクの音楽が"人口に膾炙した"かもしれないが、これをマニアが喜ぶかは微妙だ。原曲を知る愛好家には抵抗感を覚える方もいるだろうし、初めて聴く方にこんな曲だと早合点されてもちょっと困る。

もっともドン・ジョヴァンニの宴を例に挙げるまでもなく、オペラのメドレー編曲は一つの伝統的なジャンルだから、この通俗性に目くじらを立てるのは無粋かもしれない。私はイマジネーション溢れる凝った編曲とヤナーチェクの書法との違和感をかえって楽しむことができた。このような企画は歓迎したいし、実演でも聴いてみたいと思う。
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