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村上春樹ファンのための”ヤナーチェック”入門

「1Q84」「ヤナーチェック」というキーワードでこの記事にたどり着いたヤナーチェク初心者のために、ヤナーチェク作品の推薦盤を御紹介しよう。定評ある名演で、入手しやすく、日本語解説の添付された国内盤で、なるべく廉価なものということで選んでみた。

本作の鍵となる『シンフォニエッタ』は、痛快なくらいに演奏効果の高い傑作なので、チェコ人に限らず、多くの指揮者が挑戦し、録音を残している。比較的マイナーなヤナーチェクの作品の中で、これほど演奏機会・録音に恵まれているものはないだろう。難曲だが優れた演奏のCDも多い。それらの中から4点を挙げる。

(1)シンフォニエッタ、タラス・ブーリバ、コンチェルティーノ、カプリッチョ
 クーベリック指揮/バイエルン放送交響楽団 \1200
http://www.amazon.co.jp/ヤナーチェク-シンフォニエッタ-クーベリック-ラファエル/dp/B000AA7DKK/

(2)シンフォニエッタ、タラス・ブーリバ
 ノイマン指揮/チェコフィル \1050
http://www.amazon.co.jp/ヤナーチェク-シンフォニエッタ-タラス・ブーリバ-チェコ・フィルハーモニー管弦楽団/dp/B000066IKV/

(3)シンフォニエッタ、タラス・ブーリバ
 アンチェル指揮/チェコフィル \1260
http://www.amazon.co.jp/ヤナーチェク-シンフォニエッタ-アンチェル-カレル/dp/B000657LJM/

(4)シンフォニエッタ、タラス・ブーリバ、序曲『嫉妬』、組曲『利口な女狐の物語』
 マッケラス指揮/ウィーンフィル \1700
http://www.amazon.co.jp/ヤナーチェク-シンフォニエッタ-ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団-マッケラス-サー・チャールズ/dp/B00164PO2S/


小説に登場する小澤/シカゴ響、セル/クリーブランド響による演奏も優れたものだが、ヤナーチェクはまずチェコ的な解釈のものから聴いていただきたい。(1)~(3)のクーベリック、アンチェル、ノイマンはチェコを代表する名指揮者、(4)のマッケラスはオーストラリア出身の指揮者で、チェコ音楽を熟知したヤナーチェク演奏の大家である。

これらは皆、ヤナーチェクの管弦楽曲のもう一つの代表作、『タラス・ブーリバ』とカップリングされている。この曲も大変聴きごたえのある作品だ。(1)にカップリングされたコンチェルティーノ、カプリッチョ、(4)にカップリングされた組曲『利口な女狐の物語』もユニークな響きが楽しめる作品で、ヤナーチェクの個性的な作風に浸ることができるだろう。

これでヤナーチェクが気に入っていただけたならば、『草陰の小径を通って』等のピアノ曲や弦楽四重奏曲へ聴き進むといいだろう。特にピアノ作品はロマンティックなので耳に馴染み易いだろう(当会会員のピアニスト、沢由紀子によるCDの一部がMP3で試聴可能)。

(5)ヤナーチェク:ピアノ曲集/フィルクスニー(p)
http://www.amazon.co.jp/ヤナーチェク-ピアノ曲集-フィルクスニー-ルドルフ/dp/B00164PO8C/

(6)ヤナーチェク:霧の中で(4つのピアノ小品)/パーレニーチェク(p)
http://www.amazon.co.jp/ヤナーチェク-霧の中で-4つのピアノ小品-パーレニーチェク-ヨゼフ/dp/B0002ADGOA/

(7)ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第1番「クロイツェル・ソナタ」&第2番/ヤナーチェクSQ
http://www.amazon.co.jp/ヤナーチェク-弦楽四重奏曲第1番-第2番-ヤナーチェク四重奏団/dp/B0002ADGO0/

そして、この作曲家の本領は何と言ってもオペラである。当会は、ヤナーチェクのオペラ・声楽作品に関する対訳解説書を刊行しているので是非ご覧いただきたい。チェコ語の語感とモラヴィアの民謡を深く研究した末に生み出された作品は個性的な傑作ぞろいだが、親しみ易いのは『イェヌーファ』『利口な女狐の物語』だろうか。馴染みのないオペラはCDよりもDVDのほうがとっつき良いかもしれないが、あいにく日本語字幕付きのDVDは少ない。『利口な女狐の物語』は、かろうじて国内盤DVDが入手できる(※)。これは優れた演奏・演出で楽しいものだ。

(8)歌劇『利口な女狐の物語』全曲/ハイトナー演出、マッケラス指揮、パリ・シャトレ座
http://www.amazon.co.jp/パリ・シャトレ座-ヤナーチェク-歌劇《利口な女狐の物語》全曲-ジェニス-エヴァ/dp/B0001M6GUU/

国内盤で入手可能なDVDのもう一枚は、『死者の家から』だ。ドストエフスキーの小説に基づくヤナーチェク最後のオペラには強烈なインパクトがある。とても一般的とはいえないが、文学好きには特にお勧めしたい。

また、輸入盤だが最近発売されたパリオペラ座における上演のDVDもハイセンスな演奏・演出で楽しめる。これは先日NHK BSが日本語字幕付きで放送したから、そのうち国内盤が発売されるかもしれない。

(9) 『利口な女狐の物語』全曲 エンゲル演出、ラッセル・デイヴィス&パリ・オペラ座、ツァラゴヴァ、ラグランジェ、他(2008)
http://www.amazon.co.jp/Cunning-Little-Vixen-Sub-Ac3/dp/B001U1L9O4/

それにBBC制作によるアニメーション版もある。これは英語歌唱によるものでTV放映用に1時間に抜粋短縮したものだが、きわめて質の高く、家族で楽しめる。

(10)『利口な女狐の物語』抜粋(英語歌唱)
ケント・ナガノ指揮 ベルリン・ドイツオペラ
http://www.amazon.co.jp/Cunning-Little-Vixen-DVD-Janacek/dp/B001KF6F9O/
※参考記事:アニメ版 「利口な女狐の物語」


このオペラについては、高名な音楽評論家の吉田秀和が美しい文章を寄せている。

この作品を,私が数ある世界じゅうのオペラのなかでも格別に好きな理由は,まず,今いった詩趣のためだが,その詩は,「自然」から生まれる。オペラのなかで,こんなにも自然が豊かに,そうしてこしらえものでない新鮮さと自由さとで,生きているものを,私はほかに知らない。......

 その音楽には,挿絵的説明はちっともないのである。それはまったく不思議な音楽であって,半音階でなく,全音音階もまじえたディアトニックの音楽であり,そこには教会旋法もふんだんに出てくるのだが,一切は,まったく成心のない,風のように必然の法則に従いながらも,自在に吹き通う音楽になっている。......

 だから,ここでは,音楽のほうが,情景をさきどりし,つくりだす。
「黒い,乾いた峡谷。ちょうど第一幕の時と同じように,太陽が,霧雨のあと輝く」とト書きのあるこのオペラ最後のシーンを開始する導入音楽。ここでの金管たちの短く出没する楽段のかもしだす清らかな暖かさ。こんな音楽は,ほかにどこにもない。
 この清らかさを純粋と呼ぶなら,このオペラは,純粋な音楽ではじまり,そうしてそれで終わっているのである。このすばらしいオペラでは,筋を細かく追いながらきく必要なんか,ほとんどないのだ。音楽をきいてさえいれば,「自然」をより細かく呼吸することを,夏の夜を,春の陽射しを,秋の夕ぐれを,より充分に生きることにおのずと導かれることになる。
 これは,そういう作品なのである。....

吉田秀和『私の好きな曲』、ヤナーチェク『利口な女狐の物語』より)

この文章は当会出版の対訳解説書にも収録されている。またチェスノフリーデクによる同名の原作小説も田園的な詩情に溢れている。なお、この小説の訳者であり、当会顧問も務める関根日出男先生は、チェコ文化全般に造詣が深く、ヤナーチェクメダルを受賞しており、その著作の一部はネット上で読むことができる(『関根日出男先生著作集』)

残念ながらヤナーチェクの日本語で読める評伝は現在のところ入手不能だが(※イーアン・ホースブルグ著『ヤナーチェク 人と作品』は絶版になって久しい。)、当会会員、青木勇人氏によるものが当会サイトに掲載されている。また、ウィキペディアの記事も充実している。我が国のチェコ音楽およびオペラ研究の第一人者だった故佐川吉男先生の、『チェコの音楽―作曲家とその作品』には主要な作品の解説が網羅されており、ヤナーチェクファン必携。著名なチェコ音楽研究者である内藤久子先生の『チェコ音楽の魅力』も充実した内容だが、入門者にはやや難しいかもしれない。

それから、映画『存在の耐えられない軽さ』(フィリップ・カウフマン監督 ダニエル・デイ・ルイス ジュリエット・ビノシュ 1988年、米)には全編ヤナーチェクの音楽が効果的に使われている。この映画の原作者であるミラン・クンデラは、父親がヤナーチェクに師事した音楽学者だったため、ヤナーチェクに対して想いが深い作家だ。

日本ヤナーチェク友の会は1998年の結成以来、我が国におけるヤナーチェクの音楽の紹介・普及、愛好家・研究者・演奏家間の交流に力を注いでいる。ご興味のある方は遠慮なく当会まで御連絡いただきたい。

参考リンク:ヤナーチェクCD選
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チェコ音楽を中心にした音楽雑記帳です。
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