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村上春樹の『1Q84』

先月末に発売された村上春樹の長編小説『1Q84』では、冒頭からヤナーチェクの名前が登場する(”ヤナーチェック”という表記だが)。

物語は、青豆という名のヒロインが渋滞にはまったタクシーのなかで偶然シンフォニエッタを耳にするというシーンから始まる。


 タクシーのラジオは、FM放送のクラシック番組を流していた。曲はヤナーチェックの『シンフォニエッタ』。渋滞に巻き込まれたタクシーの中で聴くのにうってつけの音楽とは言えないはずだ。....

 ヤナーチェックのシンフォニエッタの冒頭部分を耳にして、これはヤナーチェックの 『シンフォニエッタ』だと言い当てられる人が、世間にいったいどれくらいいるだろう。おそらく「とても少ない」と「ほとんどいない」の中間くらいではあるまいか。しかし青豆にはなぜかそれができた。.....

(村上春樹『1Q84』11p 新潮社刊)


このくだりを読み、私の周りには「とても少ない」と「ほとんどいない」の中間くらいに位置する方ばかりが集まっているのか、と思わずニヤリとさせられた。我が家では「アイネ・クライネ」みたいに思われている曲なのだが。

村上春樹は音楽に幅広い造詣を持ち、小説やエッセイの中でクラシック音楽に触れることもしばしばだが、ヤナーチェクに言及するのはこれが初めてではないだろうか。今回は何故ヤナーチェクなのか、とまず思ったが、村上春樹にとりカフカは特別な作家だから、カフカ⇒ブロート⇒ヤナーチェクという関連で、ヤナーチェクにたどり着いたとしても不思議はないのだろう。

少々ネタばれになるが内容を簡単に紹介すると、これはオウム真理教やヤマギシ会、エホバの証人等のようなカルトのコミューンを題材している。舞台は1984年の東京。ジョージ・オーウェルの『1984』にちなんだタイトルが、『1Q84』となっているのは、現実の1984年とは少しズレた世界だということだ。主人公は天吾という名の予備校講師と、青豆という名の特殊な職業と境遇の女性で、彼(彼女)をめぐるストーリーが交互に積み重なって物語は進行する。作家志望の天吾は少女の書いた奇妙な小説をリライトする仕事を請け負うことから予想外の事件に巻き込まれる。

一風変わった響きのファンファーレから始まるシンフォニエッタは、『1Q84』へ展開する重要なアイテムとして繰り返し登場し、青豆も天吾もこのあまり一般的とはいえない曲を特別な想いで耳にする。天吾は学生時代に吹奏楽編曲版のシンフォニエッタを演奏したことがある。なるほど、ここではバッハでもシューベルトでもなくヤナーチェクでなければならなかったわけだ。作曲家や作品についても簡潔に説明されており、セル/クリーブランド響と小澤/シカゴ響のLPが出てくる。

この小説を読み、初めてヤナーチェクの名前を知る方も多いことだろう。日本のみならず世界中で広く読まれているHaruki Murakamiの小説にこんな形でヤナーチェクが出てくるのは嬉しいことだ。この小説の読者ならだれでもシンフォニエッタがいかなる曲か聴いてみたくなるだろう。

参考記事:
「シンフォニエッタ」の楽曲構成について(ダニエル・ボストック)
シンフォニエッタへの軌跡 ― ソコルとヤナーチェクと「愛国心」(福田宏)

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