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スラヴの情熱?

先日のN響アワーで放送されたエリシュカ指揮「我が祖国」は予想以上に反響があったようだ。私も放送を観たが、改めて面白いと思ったのは、エリシュカの解釈が極めてチェコ的でありながら、日本人が一般的に抱いている「スラヴ」のイメージとは大分隔たっていることだ。

多くの方はスラヴ音楽というと、琴線に触れるような土臭く民俗的な旋律、濃厚で情熱的な表情、甘美な憂いを帯びた感傷性等を思い浮かべるだろう。ドヴォジャークやチャイコフスキーのCDや演奏会に「スラヴの情熱」や「スラヴの憂愁」等の文句が踊るのをよく目にする。

しかし、先日、チェコ在住の女性演奏家からお話を伺ったところ、実際のチェコ人の性格は、ストレートで情熱的というよりシャイで醒めた傾向があるそうだ。しかも多くのチェコ人は日本人が期待するようなスラヴ的特徴をほとんど意識していないという

彼女がチェコに留学した当初、チェコ人音楽家たちの演奏が随分淡白に聞こえ戸惑ったという。しかし、理解が深まるにつれ、彼らが客観性を重視し、いかにもそれらしい表現を嫌う一方で、音の出だしやレガート等の細部に強くこだわっているのに気付いたそうだ。

確かに先日の「我が祖国」には、まさにそんな特徴が感じられた。そして、考えてみるとチェコ人指揮者による「我が祖国」は細部の彫琢や呼吸感から滲むパッションはあるが、過度に煽り立てることはなく案外端正なように思われる。名盤誉れ高いクーベリックの晩年の演奏には特殊な状況による独特の熱気があるが、これはむしろ異例な部類だろう。

「我が祖国」なら、エリシュカの繊細でしみじみとした解釈より、炎のコバケンによる熱演の方が、日本人の「スラヴ的情熱」のイメージに近いだろう。もちろん小林研一郎の解釈が誤っていると言いたいのではない。多くの日本人が朝比奈隆の明治人的な武骨さにドイツ音楽の神髄を聴くように、実態とイメージとのズレを興味深く感じるのだ。

彼女は私の話を面白く思い、知人のチェコ人に以下のような質問をしてくれた。※

質問:「あなたはチェコ人で、いわゆるスラヴ民族の一員だが、スラヴ的な情熱を意識したことがありますか?」

これに対する回答は以下のとおり。

チェコ人A:「スラヴを意識?一度もないね。チェコ語はスラヴ語派に属しているが、あくまで言語的分類。 どちらかというと民族や文化の性質はゲルマン寄りでしょう。スラヴ系言語をしゃべるゲルマン民族って言う方が感覚的には納得かな。ところでスラヴの情熱って何? 」

チェコ人B:「スラヴ的情熱? 何だねそれは。考えたこともないね。 スラヴについて教わったことは全然なかったよ。当時の学校は共産主義だったからね。 」

チェコ人C:「えっ、私らってスラヴ系民族なの? そういえばチェコ語ってロシア語にちょっぴり似てるものね。 でも、一体、情熱って何なの?」

スラヴの同胞よ連帯せよという「汎スラヴ主義」はヤナーチェクのキーワードでもある。これはハプスブルク帝国の支配に屈していたチェコ人にとって、当時席捲していた「汎ゲルマン主義」へのアンチテーゼだったのだが、ソ連に抑圧されていたチェコスロヴァキアの現代史を考えると違和感があって、今のチェコ人にはそんなシンパシーはないのかもしれない。確かにスラブというのは人種というよりは言語的な括りで、チェコ人にとってさえそれほど自明なものではないようだ。

ところで「スラヴ的情熱」でネット検索すると、以下のようなページが見つかった。
http://www.amazon.co.jp/ドヴォルザーク-スラヴ舞曲集/dp/B00069BO1E
マゼール、久しぶりのBPOとの録音。しかもスラヴ舞曲全曲録音はBPOにとって初めてということで話題となった。民族色豊かな作品を、緻密で華麗に指揮し、スラヴ的情熱あふれた演奏として高い評価を得た。

ユダヤ系米国人マゼールとベルリンフィルによる「スラヴ的情熱」って....。
こういう文章はよく見かけるが、よく考えると何だか可笑しい。

※質問に関する部分は、当人の了解の下に紹介しておりますので転載等はご遠慮願います。
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