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ラドミル・エリシュカ、札幌交響楽団を振る

この週末、このサイトでも広告してきた待望の演奏会、ラドミル・エリシュカ氏指揮、札幌交響楽団の定期演奏会を聴いてきました。

●札幌交響楽団 第494回 定期演奏会(後期)
日時:2006年12月9日(土)15:00開演
会場:札幌コンサートホールKitara
指揮:ラドミル・エリシュカ
スメタナ/連作交響詩「わが祖国」より 交響詩「ボヘミアの森と草原から」
ドヴォジャーク/交響詩「金の紡ぎ車」 Op.109
リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」Op.35


まず1曲目は「わが祖国」より 交響詩「ボヘミアの森と草原から」。通常のプログラミングなら当然「モルダウ」が来る筈だが、あえて第4曲をもって来たことに日本デビューへの意気込みを感じる。(大体、「モルダウ」は旋律は美しいがこの大曲の中では箸休めのような繋ぎの章にすぎないのだから。)まず気付くのが素人の私から見ても非常に分かりやすい指示を出す棒であること。こんな指揮なら演奏者もさぞ弾きやすいだろうと思う。しかし決して神経質にコントロールしてかっちり作るタイプではなく、オケに任せ歌わせるところも大いにあり、いつになく札響にも自発性が感じられる。結果、音楽は清々しいほど端整に響き、各声部が明晰に鳴り、トゥッティで鳴るところなどこれぞチェコ節とばかりに伸びやかな歌がつむがれるのに胸が熱くなりました。

そして2曲目がドヴォジャークの交響詩「金の紡ぎ車」。この曲は札響にとり初演だったと聞いたが、オケの健闘が感じられる秀演でした。ドヴォジャークの交響詩は、ヤナーチェクの「タラス・ブーリバ」等とも近いものを感じ、私は大好きなのですが、どうもあまり人気がない。天性のメロディ・メーカー、ドヴォジャークが惜しげもなく繰り出す楽想は豊穣そのものだが、オーケストレーションがやや野暮ったいので、下手な演奏だと冗漫になりがちだからだろうか。しかし、そこはチェコのドヴォジャーク協会会長のエリシュカ氏、実に手練れた芸を披露してくれました。とはいっても驚くようなことは何もしていない。本当に良い意味ストレートで衒いのなく、豊かなドヴォジャーク節が自然に繋がれる。こういう良さは私の畏敬するターリヒやシェイナにもあるけれど、やはり真正な伝統芸なのだろう。

ここで休憩を挟み、最後のステージはR.コルサコフのシェラザード。今回の演奏会では何んと言ってもこれが白眉でした。この曲はフィギュア・スケートのBGMのような通俗性が売りの作品だと思っていたので、正直、あまり積極的に聴きたい作品ではなかったが、音楽が進み、特に3曲目あたりから一体何が起こったのだろうというくらいオケの響きに色彩感が増してきて圧倒されました。オケ全員が指揮者のタクトの下、もの凄い集中力でお互いの響きを計りながら、指揮者と息を合わせて精妙な色彩を調合していき、それに呼応してホール全体の空気が澄んでいくがひしひしと感じられる。この幸福感。ソロの見せ場も多く、各々の演奏者の愉悦と会心の声が聞こえてくるよう。特にコンマス伊藤亮太郎氏は豊かな音色と表現力で一級の演奏を聴かせてくれた。この人はソロや室内楽でも聴いてみたい実力の持ち主でした。

それにしても、このステージの札響は、どこか一流の外来オケに化けたようで、思わずこう叫びたくなりましたね。「シンジラレナーイ!」
終いには目に涙が滲んでしまいましたが、シェラザードでこんな体験をするとは全く不覚です。

エリシュカ氏は、ヤナーチェク直系の音楽家であり、一昨年、初来日した際、当会で歓迎会を開いた縁もあったので、今回の来日演奏会の成功を祈念していましたが、正直ここまでの出来になるとは予想していませんでした。マエストロは今年75歳。今日のようにグローバリズムに席捲される前の、ヨーロッパのコンセルヴァトワールと称えられた古き良きチェコ音楽界における指揮者の系譜(ターリヒ、バカラ、アンチェル、クーベリック、シェイナ、スメターチェク、ノイマン、コシュラー等)に連なる最後の生き残りといってもいいのでしょう。そんな音楽家が我が街に来て札響とこれだけの演奏をしてくれるとは全くもって感無量です。

幸い今回はマエストロと直接お話する機会もありましたが、茶目っ気があり、とにかく音楽を愛して止まないという良い意味純朴な人柄に魅了されました。こういう方だからこそ短期間で楽団員の心を掴むことが出来たのでしょう。

そして、今回は先ほど書いたように指揮者以上に札響に驚かされました。失礼ながらこんなにポテンシャルのあるオケだとは今まで思わなかった。この調子で行けば札響は今後まだまだ進化するでしょう。黄金時代の到来を予感させるに十分な札響演奏史に残る名演でした。

それにしても、今回は近頃稀に見るセンセーショナルな成功といっていいでしょう。なにしろエリシュカ氏はこれまで来日公演も録音もなく、我が国では全く無名な存在に過ぎなかったのだから。そう考えると今回の演奏会を企画した札響の事務方の英断も称えられるべきでしょう。これを契機に、エリシュカ氏の我が国での活躍の機会が増えますように。願わくばこの至芸が録音として永く残されますように。一ファンとして、そう願わずにはいられません。
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