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アニメ版 「利口な女狐の物語」

女狐アニメ
オペラ「利口な女狐の物語」はヤナーチェクが当時人気のあった漫画付きの新聞小説を元に、自然律の厳しさと輪廻する生命を描いた晩年の傑作です。しかし、このオペラの動物界と人間界がクロスオーヴァーするストーリーは舞台演出が大変困難なので、私は以前からオリジナルの漫画に基づいたアニメーション化を夢想していました。

そんなわけで2年前にBBCがテレビ放映用にこのオペラのアニメーション化を発表した時には、やはりヤナーチェキアンの考えることは同じだと喝采し、その完成を心待ちにしていましたが、先日、ようやくBBC/OpusArte (国内発売元アイヴィー)から発売されたDVDを観ることができました。内容は私の長年の夢をかなえる見事なものでした。



ヤナーチェク:歌劇 「利口な女狐の物語」(アニメーション)
ケント・ナガノ(音楽監督、指揮)、 ベルリン・ドイツ交響楽団、
BBCシンガーズ、ニュー・ロンドン児童合唱団
クリスティーネ・バフル(ソプラノ)、グラント・ドイル(バリトン)他
アニメーション:ジェフ・ダンバー(代表作:「ピーター・ラビット」「ルパートとカエルの歌」) 
BBC/OpusArte DVD OA0871D



ジェフ・ダンバーによるアニメーションはDVDのジャケットからディズニー調のものを予想していたのですが、実際にはドローイングの感触を生かした繊細なものでした。キャラクターの豊かな動きと表情、水彩風の背景画(ヤナーチェクの故郷フクヴァルディの風景と思われる)の美しい色調等、どのシーンにも充実した質感があり、宮崎駿の作品にも通じる職人的な丁寧さがあります。CGも月光がさす夜のシーン等に効果的に使用されており、技術的にも洗練されているのではないでしょうか。

このアニメ版では100分程度の原作が60分のテレビ放映時間に合わせ省略されています。この編集処理にあたった音楽監督のケント・ナガノは、子供が観ても無理なく理解できる適切なダイジェスト版を作成しています。省略部分は補完的な映像により巧みに説明されていて、それらが音楽とよくマッチしているため不自然な断裂はあまり感じられません。むしろ、舞台では表現しにくい季節の移り変わりや天候の変化が演出に生かされています。特に間奏部の工夫は素晴らしいものです。

例えば冒頭の森番が子狐を捕らえる夏の場面から森番小屋の場面に移る間奏では、落ち葉が舞い、季節が秋に変ったことを示します。そして女狐ビストロウシュカ(英訳ではVixen Sharp-Ears)が首輪をかけられて眠る美しい間奏では回想シーンとともに子狐から成長していき、その後の穴熊との巣穴争いの場面は冬となるのです (原作では秋)。居酒屋の場面は間奏部で要領よく描かれながら省略され(お客にヤナーチェクが交じっています)、千鳥歩きで帰路につく校長先生の場面へと続きます。校長先生が片思いの女性と勘違いしてヒマワリを口説く場面の演出は特に厄介なのですが、女狐の尻尾を恋人のブロンドヘアと見立てることでうまく解決しています。そして2幕の最後は春。恋の季節になるのです。

このように四季の変化を印象付けることで、視聴者は1時間のなかでこのオペラの主題である循環する生命と自然を実感し、ラストシーンで森番が抱く感慨を共有することができるのです。

ケント・ナガノは期待通り、しなやかでみずみずしい音楽を聴かせます。20世紀オペラを意欲的にとりあげているナガノはこの作品でオペラデビューを果たし たのだそうで、ライナーノートに彼自身の思い入れがうかがえるメッセージを寄せています。歌手はあまり有名ではない若手を中心に起用していますが、主役のクリスティーネ・バフルをはじめ皆、役の個性にあった声質と台詞まわしの歌唱で違和感がありません。ヤナーチェクのオペラの歌唱では大舞台に響く声量よりむしろ演劇的な表情が重要なので、アニメーションの吹き替えは舞台空間から解放される分、オペラ独特の不自然さが薄れているようにさえ感じられました。また、ミキシングされている雷鳴や虫の声などの自然音が音楽と良く馴染み素晴らしい効果を上げていることも特筆すべきでしょう。

なお、歌唱はデヴィット・パウントニーによる英語の訳詞によっています。これは森番の冒頭の台詞からハラシタの名前がでてくるなど、分かりやすさを優先した自由な訳になっています。雄狐と飼犬ラパークは役柄に合わせてメゾソプラノからテナーに変更されています。

DVDならではの特典映像も充実しており、アングル切替により絵コンテが全編にわたって観られるほか、ダンバーへのインタヴューや製作過程のアニメーションも収録されています。

このように実に充実した作品なのですが、唯一残念なのは英語音声のみで字幕が全く付いていないことです。オペラのあらすじさえおさえておけば鑑賞に支障はありませんが、当会発行の対訳解説書を参照いただければ楽しみは倍加すると思いますので、こちらも是非よろしくお願いいたします。

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