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『古楽の楽しみ』の楽しみ

当会によるヤナーチェクのオペラ対訳解説書が完結してちょっと一段落した感がある。素人のオタクに過ぎない私が乗りかかった船で、多くの方々の助けを得ながらこれまでなんとか幹事として「友の会」を続けてきたが、先日、これで一旦、会の活動を小休止したい旨、会員の皆様に手紙を書いた。この先は未定だが、ヤナーチェキアンの寄合所である会がなくなることはない。ただ、当面、私は一介のぱみゅらーとして平穏な日々を過ごしたいと思っていたところだ。

もうガツガツとCDを蒐集する齢でもあるまい、と半ば隠居気分で乱雑に積み重なった本やCDの山を整理していた。そんな折に聴きはじめたのがNHKFMの朝の番組『古楽の楽しみ』だ。

そもそも私が古楽にはまったきっかけは、『古楽の楽しみ』の前の番組、『朝のバロック』だった。10代の頃、新譜紹介として放送されたカンプラのレクイエム(ガーディナー盤)に魅せられたのが始まり。小学校でバッハが「音楽の父」と教わっていたせいか、何となくクラシックはバッハから始まるような感覚だったので、バッハ以前にこんなに素敵な音楽があるのかと酷く驚いた覚えがある。以来、多感な10代はデラーやPCA、マンロウなどをLPで聴き漁ったり、『朝バロ』をエアチェックをするなどして過ごしてきた。なにしろ「音楽史」のレコードは廉価盤が妙に充実していたので若年者に優しかった。そんな訳で私の古楽歴は、チェコ音楽歴、ヤナーチェク歴よりも実はずっと長い。

だから、再びFMを聴きはじめたのは、加齢に伴う早朝覚醒を紛らわせるとともに、退行的な郷愁もある。そして久しぶりに古楽をラジオで聴いてみると改めて面白いことが分かった。

お目当ての音楽を聴くというのも良いのだが、放送の流れに任せて聴くというのも肩の力が抜け、新鮮な喜びがあってよい。これがロマン派の音楽ならちょっと重いかもしれないが、古楽だと自然に空気に馴染む。

以下、『古楽の楽しみ』の魅力を挙げてみよう。

1.時間帯、分量が良い
平日6時から55分の番組だ。毎朝、この時間に目覚める方は多いだろう。朝からシューマンやマーラーを聴かされては堪らないが、古楽の音が醸し出す空気は爽やかな朝の気分に馴染んで、一日の自然なスタートを促してくれる。

考えてみればクラシックの中でも古楽は古典派以降のモダンな音楽と毛色が違うように思える。それは無論、古楽器と古楽奏法によるのだが、音響への美意識がモダンとはそもそも異なるように思える。大雑把な印象だが、モダンなクラシックは、声は大きく、情感は生々しく、響きはみっしりと厚く耳に残る。これらは午後か夜に楽しむべき音楽で、朝ならば胃もたれがする。一方、古楽ならば響きは軽く、感覚美が強いように思われる。だから、ずっと付き合い易く、じっくり聴いてもよいし、朝の支度をしながら聴いてもよい。途中から聴いても楽しめる。だが薄味なわけではない。個々の曲が5~10分ほどで、55分の放送。この枠が長すぎず短すぎず心地よい。

2.プログラムと案内者が良い
月曜から木曜までがその週の特集で、金曜がリクエストによるアラカルトとなっている。特集は「〇〇とその周辺の音楽」や「〇〇の魅力」というようなタイトルが多く、一人の作曲家に限らない包括的、俯瞰的な内容になっている。ご案内下さる先生方の解説は簡にして要を得たもので、控えめな口調だが、言葉の端々に企画・選曲への拘りが滲みニヤリとさせられる。例えばここ2か月の特集は次のようなものだ。タイトルだけ見ても心躍らないだろうか。

・ストラデルラとその周辺の作曲家たち /今谷和徳
・モーツァルトが訪れた頃のフランスの音楽  /関根敏子
・イギリス・バロック音楽を輝かせた天才パーセルの音楽 /礒山雅
・フレスコバルディとその周辺の作曲家たち /今谷和徳
・ルイ14世のおい フィリップ・ドルレアンにまつわる音楽 /関根敏子
・古楽としてのハイドン /礒山雅

「周辺」といっても亜流でも中途の過程でもない魅力的な作品に触れるに、とびとびのビックネームで把握してきた音楽史の線がつながるから楽しい。キーマンを手掛かりに音楽史への興味が広がっていく喜びがある。

3.リスナーが良い
ツイッターで #古楽の楽しみ を検索すると、朝から多くの古楽ファンが集い、囀っている。ニコ動の実況さながらだ。古楽について話が合う方はクラシック好きの中でもそう多くはないので嬉しくなる。そうした「古楽の民」をホストのように纏めて下さっているのが、タイコウ様こと「つらつらたまさか」氏だ。氏の古楽への深い造詣と愛情、寛大なる茶目っ気には感服してしまう。集まっている皆さんには、楽器に親しみ、語学に堪能な方も多い。そしてなにより各々の古楽への偏愛ぶりが面白い。チェンバロ好き、イタリア・バロック好き、歌好き、笛好き等々。浅学非才な身だが、たまに混ぜていただいている。

先日はちょっとした椿事があった。女子サッカーの中継放送のため予定の番組が休止されてしまったのだ。それに伴いネット上で『偽古楽の楽しみ』がタイコウ様によって企画された。このツイッターラインはまとめられているが大傑作だ。

「偽古楽の楽しみ」 2015年6月17日

一つだけ悩ましいのは、これまで知らなかった作品、作曲家、演奏家との出会いから、そろそろ自重しようとしていた「ポチット」の誘惑に駆られがちなことだ。古楽研究も古楽演奏も進化しているのだから、知られざる沃野は日々開拓が進んでいるように思われる。おかげで毎朝『古楽の楽しみ』から目ではなく耳が離せないのだ。


追記:
NHKには23時くらいからの再放送をお願いしたい。
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