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エリシュカ&東京佼成ウインドオーケストラによる「新世界の新世界」

昨年4月にラドミル・エリシュカが客演した東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)の定期演奏会は大きな反響を呼んだが、このたびそのライヴ録音がCD化された。

東京佼成ウインドオーケストラ ラドミル・エリシュカ「新世界の新世界」
エリシュカ&TKWO

ラドミル・エリシュカ指揮 東京佼成ウインドオーケストラ

(曲目)
 ドヴォジャーク:序曲 ≪謝肉祭≫ 作品92,B.169 (スルカ編曲/ヴラフネク校訂)
 ヤナーチェク:シンフォニエッタ ヤナーチェク作曲(上埜孝編曲)
 ドヴォジャーク:交響曲第9番《新世界より》(スルカ編曲/ヴラフネク校訂)
 (第115回定期演奏会 2013年4月27日 東京芸術劇場にて)


チェコはよく「弦の国」といわれるが、金管奏者のレベルも伝統的に高く、特に優秀なホルン奏者を数多く輩出している。このため吹奏楽も優れており、特に大統領府が置かれているプラハ城の警護隊付き音楽隊である、プラハ城警護隊音楽隊(Hudba Hradní Stráže a Policie ČR)は世界的にも有名である。今回のドヴォジャーク作品の吹奏楽編曲は、このプラハ城警護隊音楽隊が門外不出のスコアを提供しており、エリシュカが教鞭をとっていたプラハ音楽院の教え子で、現在、この楽団の常任指揮者兼音楽監督を務めるヴァーツラフ・ヴラフネク大佐が、これを校訂している。このヴラフネク大佐がTKWO指揮したチェコ作品アルバム「フェスティーヴォ」が2013年度のレコードアカデミー賞を受賞したことは記憶に新しい。

しかし、TKWOのように公演活動をメインにするプロの吹奏楽オーケストラというのは、チェコでも類を見ないらしい。エリシュカが吹奏楽アンサンブルを指揮する機会はこれまでほとんどなかったようだが、ブルノ・ヤナーチェク音楽院を卒業したばかりの駆け出しの頃は、徴兵先の軍楽隊を指揮したこともあったそうだ。この軍楽隊はチェコフィル奏者が参加するかなり高水準な楽団だったという。このTKWO定期への客演は、一期一会の貴重な機会であり、80歳を越えたエリシュカにとってもチャレンジであった。

この演奏を聴いてなにより思ったのは、音楽の正統的な味わいだ。吹奏楽に限らず編曲モノというとアレンジの面白さを楽しむ意識が先行しがちだが、演奏といい編曲といい、イロモノ的な違和感がなく実に格調高い。まるで作曲者自ら書き下ろした曲ように聴こえる。このCDに収録された演目は、エリシュカの十八番と言えるもので、しばしば演奏され、既に札響との録音もある※。それらと比較して聴くと、エリシュカの音楽作りのツボがわかって色々面白い。

まず、ドヴォジャークの序曲『謝肉祭』から惹き込まれる。全体的な解釈としては原曲と同様だが、通常のオケと吹奏楽では呼吸が若干違う。これは音色に加え、管の場合、発声までの立ち上がり時間が、弦よりも遅延することによるのだろう。エリシュカは、各楽器を十分に響かせつつ各声部を積み上げ音楽を構成する名人である。ここでも、水は違えど名人芸が発揮されている。管を無理なく響かせながら、タメを利かせて弾けさせる呼吸が心地よく、まるでフチークのマーチのように響くところがある。曲想のコントラストがとてもいい。

ヤナーチェクのシンフォニエッタもユニークで、上埜孝による編曲は原曲の味わいを活かしつつ、吹奏楽の魅力を加味したものだ。原曲にこだわりあるヤナーチェキアンの耳にも馴染むのは、この作品自体が元々軍楽隊の響きから着想されたからかもしれない。吹奏楽編曲により音響的モザイクが聴き取りやすくなって味わいを増したところすらある。

ヤナーチェクのリズムは鋭く、前のめりで、この曲には荒っぽい勢いを重視した解釈も多いが、エリシュカはオケの場合と同様に、落ち着いたテンポで着実にヤナーチェク独特の音響を際立たせていく。これは全般的に言えるのだが、エリシュカの指揮では強奏部分でも、音色が飽和してひしゃげてしまうことがない。鋭いコントラストはアンサンブル全体のバランスにより実現される。その美点が、強奏で濁りやすい吹奏楽アンサンブルで、より顕著に表れ、響きに奥行を与えている。

そして、新世界交響曲は、やはり第二楽章が白眉である。吹奏楽アンサンブルの柔らかな響きの魅力が十全に発揮された演奏といえるのではないだろうか。管の呼吸が弦とはまた違った余韻と拡がりを与えて感興を深めており、コラールのような宗教性すら感じる。

それにしても、これがライヴ録音であることには驚嘆せざるえない。世界トップクラスと言われるTKWOの巧さには舌を巻くばかりだ。もっとこのコンビで聴いてみたいといったら贅沢だろうか。「新世界の新世界」と銘打たれたCDだが、確かに「新世界」のCDは数多あれど、このような一枚は類を見ないだろう。

※ドヴォジャークの序曲『謝肉祭』だけはCDがないが、以前、札響との演奏がレコード芸術の付録CDに収録されていた。
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