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安川加寿子のドビュッシー ピアノ独奏曲集成

今年はドビュッシー生誕150周年にあたり、それにちなんだCDが色々リリースされている。その中でも特に感銘を受けたのが、先日再発された安川加寿子の録音だ。

ドビュッシー生誕150周年特別企画 ドビュッシー:ピアノ独奏曲集成
安川加寿子(ピアノ) 
ビクターエンタテインメント 4CD

-ピアノ独奏曲集成-安川加寿子

言うまでもなく安川加寿子(1922-1996)は我が国のピアノ界における大御所で、戦後の楽壇の第一線で活躍し、多くの後進を育成した。ピアノ学習者には、数々の楽譜、教本の編者として馴染みが深いだろう。もちろん私もその高名を存じてはいたが、演奏を聴いたのは今回が初めてだった。

今更ながら驚いたのは、どの曲を聴いても往年の香気溢れる生粋のフレンチ・ピアニズムであること。安川は外交官の娘として幼少の頃よりパリに育ち、名ピアニストにして名ピアノ教師だったラザール・レヴィに師事したのだから不思議はないのだが、これが本当に日本人によるドビュッシーかと思う。(ちなみにレヴィの門下生には他に、モニク・アース、クララ・ハスキル、イヴォンヌ・ロリオ、ソロモン、田中希代子、原智恵子等がいる。)

音量のダイナミックレンジは広くないので、一聴すると地味な印象だが情報量は豊かだ。並のピアニストなら力で押し切るところも響きの質感に濃淡をつけ雄弁に聴かせてしまうからだ。どの音も丸く粒立って共鳴し軽やかだが、響きの重心は低いところにあるため柔らかい。リズムは粘らずピンポイントに正確で洒脱なユーモアがある。そしてなにより、こうした技巧が音響的な美しさ以上に洗練した表現として活きているところに感嘆してしまう。

このドビュッシーは研ぎ澄まされた感覚美に引き込むというよりは、聴手の想像力を喚起するような演奏だ。ドビュッシーのピアノ曲というと、どこか韻文的なイメージがあるけれど、この演奏はむしろ散文的な語り口の巧さが際立っている。

例えば、前奏曲集第2集の有名曲、第5曲「ヒースの荒野」。親しみ易い主旋律にスケールが絡むのだが、その展開の妙。多くのピアニストは、スケールを背景に散らして響きのエアを醸し出すが、安川はむしろ小気味よく鳴らして呼吸の変化で音楽を組み上げてしまう。まさに名人芸だ。

安川に師事し、彼女の評伝を著した青柳いづみこ氏もライナーノートで次のように述べている。

その美質はあげていけばきりがないが、もっとも特筆すべきは類まれなるバランス感覚だろう。安川のドビュッシーは、決して、感覚的なものに依存したアプローチではない。楽譜をきちっと読み、明快なロジックで分析した、むしろ骨太な音楽である。

ドビュッシーのピアノ曲は好物で、色々と聴き漁っているが、この演奏はとても好みに合った。そういえば、演奏が似ているわけではないが、アラウのドビュッシーにも語り口の妙があって気に入っている。こういうタイプの演奏は聴き疲れしないので、つい繰り返し味わってしまう。

これはドビュッシーの数ある録音の中でもスタンダードに価するものだろう。この名盤を廉価に再発してくれたビクターエンタテインメントに心から感謝したい。
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