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2011年のディスク十選

昨年は何より震災の年だった。大津波が三陸の町々を見る間に呑み込んでいく映像に震撼しながら、何気ない日常の足元が揺らぐように感じた方も多かったろう。そこですがるように出てきた言葉が「絆」だ。

私のようなクラオタにとって付き合いの長いクラシック音楽もまた日常の一部だが、近頃では、ふと、一素人がこうまで西欧古典音楽(?)に肩入れする「絆」とは一体何なのだろうと思ってしまう。原発事故の影響で多くの演奏家が来日公演をキャンセルするのを横目に少々白けた気分になり、ああ、所詮はクラシック音楽など舶来文化であり、極東の島国との「絆」は意外に薄いのだと思わなくもなかった。

加えて、これまで吟味して買い揃えた録音が箱で投げ売りされているのを眼にし、国内外における音楽団体の乱暴なリストラ策を耳にするに、無常観と言おうか、クラシック音楽自体の行く末さえ案じずにはいられなかった。

その一方で、音楽の普遍的な力に励まされるところも多く、音楽を通じて知り合った方々との「絆」もますます重みを増している。

昨年は特に生演奏の有難味、とりわけ地元に札幌交響楽団がある幸福をしみじみ感じた。震災直後に高関健が指揮したマーラーの交響曲第7番は印象深いものだったし、4月にエリシュカが指揮したドヴォジャークのスターバト・マーテルは奇しくも深い鎮魂の祈りとなった。定期後半の尾高忠明によるベートーヴェン・チクルスは、潔いほどに正攻法に徹したもので、この古典を演奏することは、いまだに大胆な挑戦であり、聴き手にとっても新鮮な体験であることを再認識させてくれた。

無常と普遍の間で揺れた一年。たかが音楽、されど音楽というべきか。生きにくい浮世、音楽に救われている分だけ恩がある。出来る範囲で恩を返していけたらと思う。

さて、以下は遅ればせながら昨年の私的ベスト盤。順不同。旧録音を含み、ここで単発で取り上げたものは除外している。

1.リュリ:『アティス』全曲 
 ヴィレジエ演出、クリスティ指揮、レザール・フロリサン(2011 2DVD)

2.リュリ:『アルミード』全曲 
 カーセン演出、クリスティ指揮、レザール・フロリサン(2008 2DVD)

3.クラウディオ・アラウ/EMI録音集1938-62 (EMI モノラル 12CD)

4.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第3,13,14,21,23,26,30,32番 
 アラウ( Euroarts 1970,77 2DVD)

5.ベートーヴェン: 交響曲全集
 クーベリック指揮、バイエルン放送響他(DG/TOWER RECORDS 5CD)

6.ワーグナー:『ワルキューレ』全曲 
 クロブチャール指揮、メトロポリタン歌劇場、
 ニルソン、リザネク、ヴィッカーズ、ステュアート、
 ルートヴィヒ、リッダーブッシュ他
 (SONY 1968 モノラル 3CD)

7.マルセル・メイエ/スタジオ録音集成1925-1957 (EMI モノラル 17CD)

8.ヴァインベルグ:弦楽四重奏曲集 第1番、第3番、第10番、狂詩曲、アリア
 ダネル四重奏団(CPO)

9.クルターグ: 弦楽四重奏のための作品集
 アテナ四重奏団(Neos)

10.間宮芳生の仕事 TOKYO Cantat 2011
 ・合唱のためのコンポジション第1番 混声合唱のための(1958)
 ・合唱曲『三色草子』 女声合唱のための(1980)
 ・合唱のためのコンポジション第14番 男声合唱のための(1994)
 ・日本民謡集より
  (御祝/とのさ/雨乞唄/こきりこ/杓子売唄/
   翁舞の唄・囃子/銭吹唄/早念仏と狂い)
 ・合唱のためのコンポジション第9番『変幻』 
   混声合唱・オルガン・2台のハープ・2コントラバスと打楽器のための(1974)
 ・合唱のためのコンポジション第15番『空がおれのゆくところへついてくる』 
   児童合唱・打楽器とピアノのための(2002)
 ・合唱のためのコンポジション第5番『鳥獣戯画』 
   混声合唱・打楽器・コントラバスのための(1966) 
 Choeur Chene、女声合唱団やまねこ、栗友会合唱団、
 むさし野ジュニア合唱団他

番外:Colors From A Giants Kit/Sir Roland Hanna

1)、2)
昨年はフランス・バロックに耽溺し色々と漁ったが、やはり一番の収穫はクリスティ御大のリュリだ。器楽奏者出身の古楽指揮者の多くは、きっちりとアンサンブルを整えた演奏を聴かせるが、クリスティは、それに加え、響きに生々しい感触をもたせながらフレーズを若干引きずるように伸縮させる。これが何とも風雅だ。身体をグーッと張り、パッと解放する、能や歌舞伎の所作などとも通じる身体性が音楽にこもっていて、御囃子にも通じる生理的快感を呼び覚ます。

歌手は特に『アルミード』のタイトルロール、『アティス』のシベルを歌った、ステファニー・ドゥストラックが素晴らしく、舞台映えもする。
演出は共に美しく、安心して観られるもので、特に『アルミード』のロバート・カーセンの演出はアイディアが光る。

なお、現代におけるフランス・バロック・オペラ復興の原点は、1987年に上演されたクリスティの『アティス』である。1)はその24年ぶりの再演で特別な意義をもつ。

3)、4)
昨年はアラウ没後20周年だった。EMIの録音は初期と言うよりも壮年期の録音で、後年の滋味溢れる演奏と異なる味わいがあり新鮮だった。アラウのベートーヴェンが格別なのは無論だが、このDVDでは巨匠の演奏する表情が人間味に溢れてなんとも良く、眼を奪われる。

5)
今更ながら、やはりベートーヴェンは米の飯。廃盤だったのがむしろ不思議な名盤中の名盤を再発したタワーレコードの見識に敬意を表したい。交響曲全9曲を別々のオーケストラで演奏したクーベリックの代表盤で、瑞々しい響きへの志向が貫かれている。ライナーノートのインタビューでクーベリックが、今ではどんな曲でもスコアを読めば頭の中で音を響かせられるが、25歳のときはヤナーチェクが難しかった、と述べているのは興味深い。

6)
往年の貴重な録音。なんという豪華なキャスト! とりわけヴィッカーズのジークムントに痺れた。ライブゆえの傷もあるが、クロブチャールの手練れた指揮が流石で、速めのテンポで重くもたれずに演劇的呼吸を紡いでゆく。

7)
フランスのピアニスト、マルセル・メイエ(Marcelle Meyer, 1897-1958)は、ロン、コルトーに師事し、サティに可愛がられ、プーランクら6人組やピカソ、コクトーと親しく関わり同時代作品をよく弾いた。ラモーやクープランを弾くピアニストのはしりで、タローも傾倒しているそうだ。ディスコフィル・フランセ(Les Discophile Francais)の原盤はマニア垂涎らしいが、EMI録音も含め全て網羅したこの箱は3千円でお釣りがきた。

8)
この秋に来札したダネルSQがアンコールで「アリア」を弾いた。腕は立つが少々癖者の第1Vnマルク・ダネルが、珍しく熱く共感しているのが印象的だった。モイセイ・ヴァインベルグ(Moisei Vainberg、1919~1996)はポーランドに生まれソ連に移った作曲家で、作風は親交があったショスタコーヴィッチにとても近いが苦い諧謔味より内省的な歌心があり叙情的。ダネルSQがヴァインベルクを我が国で演奏するのは、その時が初めてだという。もっと聴かれてもいい作品だと思った。

9)
ハンガリーの現代作曲家、クルターグ・ジェルジュ(1926-)の弦楽四重奏曲集。ベルリンの女性グループ、アテナSQによる演奏。初録音4作品が含まれている。ほとんどが3分にすら満たない短い曲で全体に静謐な雰囲気が漂う。響きに余韻がある美しい演奏だ。クルターグでは他に、イタリアのヴィオラ奏者マウリツィオ・バルベッティによるSigns, Games & Messagesも良かった。

10)
昨年5月すみだトリフォニーホールにおけるライヴ録音。間宮芳生ファンの長年の飢えを満たす2枚組。連作「合唱のためのコンポジション」は全曲録音が欲しい。

番外)
ジャズピアノの巨匠、サー・ローランド・ハナの包容力があるピアノを聴くと、ささくれた気分が落着き、暖かな心持ちになる。最も繰り返し聴いた一枚。

2011best
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