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エリシュカ&N響でシンフォニエッタを聴く(2012.1.13/14)

先週末に上京し、ラドミル・エリシュカが客演したNHK交響楽団の定期演奏会を2日にわたって聴いてきた。

■NHK交響楽団~第1718回定期公演

日時:2012年1月13日(金)19:00開演 (※FMにて生中継、TV放送収録)
          14日 (土) 15:00開演

指揮:ラドミル・エリシュカ
コンサートマスター:篠崎史紀
NHK交響楽団

会場:NHKホール

演目:
スメタナ:交響詩「ワレンシュタインの陣営」作品14
ヤナーチェク:シンフォニエッタ
ドヴォジャーク:交響曲 第6番 ニ長調 作品60

マエストロ、エリシュカのN響定期への登場は2回目。「我が祖国」を振った2009年2月のデビューはセンセーショナルな成功をおさめ、聴衆の投票による「2009年で最も心に残ったN響コンサート」では第一位に輝いた。今回メインの演目である2曲は札響で既に取り上げ、CDにもなっている

今回は存分に引き出されたN響の底力に感嘆する一方、札響の魅力も再認識できた。マエストロの解釈に大きな変更はなかったように思える。しかし、音楽の印象はオケにより若干異なるものとなった。

特に差を感じたのはドヴォジャークの交響曲第6番だ。この作品は、ドヴォジャークがブラームスの影響を受けつつスラヴ色を強く打ち出した野心作で、ボヘミア的な感興に溢れている。しかし、演奏機会は7番以降の交響曲と比べてかなり少なく、おそらくN響にとって初演、したがって日本のオケによるライヴがオンエアされるのも初めてだろう。

札響との演奏は旋律の歌わせ方にチェコ的な息吹を感じるものだったが、今回のN響の演奏はブラームス流のドイツ的構成感が際立っていた。実に立派な演奏だ。特に印象的だったのは第2楽章、艶やかな弦が木管と共にフレーズをなめらかな起伏をもたせ深い響きへ導く様は実に格調高く、パセテックに転ずる部分でのティンパニとのアンサンブルも冴えていた。また、第4楽章の終結部、弦が声部を受け渡しながら最高潮を迎えるアンサンブルは圧巻だった。

N響は札響より各声部共に響きに芯があり、弦と管のコンビネーションに隙がない。つまりは技術的に上かもしれないが、呼吸への感応性という点では札響の方が優れ、変化に富んで魅力的に思える部分もあった。例えば第1楽章の冒頭から札響の演奏には旋律が流れるように立ち上がり、吹き抜け、変転していく心地よさがあったが、それがN響だと「主題の提示」に基づいてきっちり積み上げられていくようで、そこが少々くどくも感じられた(贅沢な不満だ)。これは、演奏の難というより作品の性格かもしれない。おそらく7番ならこうは思わなかったろう。こうした違いが、指揮者の解釈ではなく、オケの個性と作品の多面性から現れているのが面白い。同様のアプローチでも光の当たる方向によって印象は変わるのだ。

難曲シンフォニエッタは今回の方が完成度が高かった。特に2日目は遂に到達した完成形とも言うべきもので、マエストロとしても会心の出来だったろう。

演奏の特徴は、札響の時に述べたと同様、重厚な迫力よりも室内楽的な精妙さを追求したものだ。前のめりにドライヴし勢いで聴かせる演奏が多い中、エリシュカの悠然たるテンポはユニークで、肩透かしを食らったように感じる向きもあったろう。しかし、それが年寄りめいたものでなく、テクスチャを丹念に浮き立たせるための必然であったことは、見事な彫琢からきっと理解されただろう。ここで活きてくるのがN響の底力で、各声部が強靭さをもって安定的に響き、独特の音響モザイクが細部まで明晰に聴き取れた。結果、鄙びた地方色とモダンな表現性が両立していたのは稀有なことだろう。これは老練なオーケストラ・ビルダーにしてこそ達成可能な成果だ。以前、マエストロにお会いした時、シンフォニエッタについて次のように語っていたが、今回、その言葉の意味が本当に理解できたように思う。

これは本当に難しい曲だ。そう、まるでペトルーシュカや春の祭典のように。リズムとかテンポとかいう単に技術的な問題ではない。表現こそが難しいのだ。日本のオケでやるから難しいのではない。チェコのオケでも同じことだ。この曲は、本来、よほど上手いオケでないと、まともに演奏出来る曲ではない。そう、今まで演奏したタラス・ブーリバより女狐組曲よりはるかに難しい。ヤナーチェクの中では人気曲でしばしば演奏されるが、単に楽譜通りさらっていたのでは駄目だ。ヤナーチェクもどきでは駄目なのだ。

私は、ふと、近年ヤナーチェクへの共感を深めているブーレーズがこのシンフォニエッタを聴いたらどう評したろうと思った。というのも、ブーレーズのストラヴィンスキー演奏に近い美意識を、この演奏に感じたからだ。マエストロは卓越したスコアリーディング能力から現代音楽のスペシャリストとしても評価されているが、そういう面が発揮されたヤナーチェク演奏だったといえるだろう。

やはり印象的だったのは3楽章の美しさ。弦の深い響きと個性的な管のコントラストが見事な効果をあげていた。終楽章のコーダは、2日目に金管の音量をやや上げ、1日目より迫力を増していたが、最後の弦のテクスチャを掻き消さないよう一旦ふっと音量を絞るなど、最後まで音響バランスへの配慮が貫かれていた。

スメタナの交響詩「ワレンシュタインの陣営」もエリシュカらしい佳演だった。ほとんどの方はこの曲を初めて聴き、どこか取り留めなくチグハグな曲想に首を捻ったようだが、私はこの珍品をとても楽しんだ。弾力的なリズムと響きの効果に依った作品で、デットなNHKホールでなければもっと楽しめたろう。ここでも昨秋に札響のラプソディ特集で聴かせた、マエストロのオールドファッションな洒脱さが活きていて独特のユーモアのセンスが感じられた。

客入りは、初日で7割、2日目が9割というところか。これだけ地味な曲目のコンサートにしては興行的にも大成功といっていいだろう。

今回も当会会員や音楽仲間が多数集い、再会を喜び、感動を分かち合うことができた。会場でお会いした当会会員の樋口裕一さんアリスさんISATTさんもブログにレビューを公開している。良い演奏を聴いた後、趣味が通じる友人と語らうほど楽しいことはない。はるばる北海道より駆けつけた甲斐がある充実のコンサート始めだった。
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