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エリシュカ&札響の名曲シリーズ「ラプソディ・イン・ヨーロッパ」

ラプソディ・イン・ブルー
札幌交響楽団の首席客演指揮者ラドミル・エリシュカは、4月の定期とともに秋の名曲シリーズに登場するのが恒例だ。このシリーズは、定期演奏会とは別枠で親しみやすい曲を廉価に聴かせるというコンセプトで、昨年は「踊るスラヴの旅」と題しスラヴ系の舞曲が特集され好評を博した。今年は「ラプソディ・イン・ヨーロッパ」と題し、狂詩曲・奇想曲が取り上げられた。

今回も楽しい選曲だが、昨年以上に充実した内容になった。それは、舞曲以上に自由な形式である狂詩曲の面白さに加え、海外公演を経て近頃ますます快調な札響の充実によるものだ。

聴手にとっては肩の凝らない曲目だったが、演奏家にとっては相当ハードだったろう。華やかな効果が散りばめられ、技巧的なパッセージが頻出する作品は、オーケストラの芸を堪能するに相応しいものだった。

●札響名曲シリーズ2011-2012 vol.2 ラプソディ・イン・ヨーロッパ

日時:2011年10月15日 15:00~
会場:札幌コンサートホールKitara
演奏者:
 ラドミル・エリシュカ(首席客演指揮者)
 札幌交響楽団
 大平まゆみ(コンサート・ミストレス)

曲目:
ドヴォジャーク:「スラブ狂詩曲 第3番」 変イ長調
チャイコフスキー:「イタリア奇想曲」
リスト(ミュラー=ベルクハウス編):「ハンガリー狂詩曲 第2番」
シャブリエ:「狂詩曲 スペイン」
エネスコ:「ルーマニア狂詩曲 第1番」イ長調

(アンコール)
 フチーク:フローレンス行進曲

今回のプログラムは、まるでコース料理のようにうまい取り合わせだった。
ドヴォジャークのスラヴ狂詩曲第3番は、有名なスラヴ舞曲に続いて作曲されたもので、この作曲家の管弦楽作品の中では少々薄味だが、チェコ・ドヴォジャーク協会会長であるエリシュカはさすがに手馴れたさばきで気の利いた前菜を提供した。中間部では、コンミスの大平が艶のある音色でキリリと見事なソロを聴かせた。

チャイコフスキーのポピュラー名曲、イタリア奇想曲はなかなか難曲だが、指揮者がアンサンブルを引き締める一方で、オケには伸びやかな主張が感じられた。冒頭の勇壮なファンファーレでは金管群が実力を存分に発揮し、響きがホールの空気にのって心地よく伸びていたし、木管の技巧的なくすぐり、弦の表情豊かな歌やきざみも確かな感触があり素晴らしかった。

リストのハンガリー狂詩曲第2番は、通常演奏されるドップラーの編曲版を更にニ短調に移調して編曲された版による。派手な身振りをとることの多い曲だが、ここではオケを意外に小粋に鳴らしたユーモアが印象的だった。例えば、楽想の替り目(特に終わりの方で金管が出てくるところ等)では、微妙にためることで、どこかおどけた表情が浮かんでくる。往年のウィンナ・ワルツ演奏のように、この少々オールドファッションな洒脱さは、グローバル化した音楽家の機能的なクールさとは異質な芸で、おそらくは、かつてハプスブルクが支配した中欧という地域に根ざした伝統から来る味わいではないだろうか。

そして、シャブリエ。エリシュカが我が国でフランス作品を演奏するのは、実はこれが初めてだが、余韻のある軽やかなリズムで薫り高い空気を醸し出していた。エリシュカの意外な面を覗いたように思ったが、マルチヌーの音楽を例に挙げるまでもなく、チェコ音楽家のフランス音楽への共感はそれほど驚くことではない。(チェコ・フィルやヨゼフ・スーク、ヴラフSQ等、チェコの演奏家によるフランス作品の名録音は多い。)脂っこい曲の中で箸休めのように聴かれた小品だったが、趣味よく印象に残る演奏だった。

そして、この日の白眉はエネスコのルーマニア舞曲だった。パリを本拠地にしたルーマニアの作曲家、エネスコの狂詩曲は、フランス的な色彩感と民族的なリズムが交錯しながら高揚する華麗な曲で、今回のメニューの主菜に相応しい。ここでオケは、効果的にクレッシェンド、アッチェレランドされるが、決して野放図に煽られることはない。前のめりに崩れることなく、響きをしゃんと保ったまま盛り上がっていく様に感嘆した。オケには、室内楽を聴くかのように各奏者の個性と意志が強く感じられ、とても気持ちの良い演奏だった。

そして”デザート”は、”ボヘミアのスーザ”ユリウス・フチークによるフローレンス行進曲。茶目っ気たっぷりでとてもリラックスした演奏は実に微笑ましかった。

客入りは8割ほど。皆、心から楽しんだようで、終演後は茶目っ気溢れるマエストロのステージマナーに沸き、ホール全体に幸福感が漂っていた。

エリシュカという指揮者は、オケの上に君臨し強い個性を発揮するカリスマではない。じっくりとオケに付き合い、スコアを精緻に読み込み(この卓越した能力のため現代曲の演奏経験も豊富だ)、アンサンブルを引き締め、老練にオケの実力を引き出す職人的な指揮者だ。そうした芸風の指揮者にとって気心の知れたオケとの結びつきには特別な意味があるのだろう。

エリシュカは、この演奏会の10日前に大阪フィルの定期演奏会でスメタナの「我が祖国」を指揮した。この演奏会は大成功を収め、2日目は終演後に聴衆が総立ちになるほどだったという。エリシュカは、今後も国内の様々なオケへ客演するだろうが、今回のように、指揮者の芸とオケの呼吸が温かくバランスした味わいは、エリシュカ&札響ならではだと感じた。
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