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エリシュカ&札響のスターバト・マーテル

Eliska-stabat

今月80歳の誕生日を迎えた札響の首席客演指揮者、ラドミル・エリシュカの登場も今回で7度目となる。今年も道外勢も含めた数名の当会会員がKitaraに駆けつけ、私は2日間にわたって聴くことができた。


■札幌交響楽団 第538回 定期演奏会

日時:
 2011年4月22日 19:00 
 2011年4月23日 15:00
会場:札幌コンサートホールKitara

指揮:ラドミル・エリシュカ(首席客演指揮者)
札幌交響楽団
半田美和子(S)、手嶋眞佐子(MS)、小原啓楼(T)、青山貴(Br)
札響合唱団、札幌アカデミー合唱団、札幌放送合唱団
合唱指揮:長内勲

曲目:ドヴォジャーク スターバト・マーテル op.58


エリシュカが、今回演奏する曲目は、奇しくも悲しみの傑作、スターバト・マーテルである。震災の影響により多くの演奏家が来日をキャンセルする中、聴き手も演奏者も特別な感慨を抱かざるえない状況ではあるが、そうした想いとは別に、なにより強く感じたのは、ドヴォジャークを熟知したマエストロの職人的な老練さだ。

この作品は、全10曲、演奏時間90分にも及ぶ大作である。そのうち終曲におけるアーメン・フーガのみアレグロで、あとはアンダンテ以下の速度であり、前半5曲は全て短調で書かれている。単調に陥ってもおかしくない構成だが、冗長さを感じずにすむのは、ドヴォジャークの作曲技法の巧みさゆえだ。この作品が、3人の子供の死をきっかけに作曲されたことはよく知られているが、そういった事情以上に、バッハやヘンデル、モーツァルトやハイドン、ベートーヴェン、ベルリオーズ等、過去の作品を研究した成果が見て取れるように思う。例えば、第2曲の主旋律はベルリオーズのレクイエムの「ラクリモーザ」と同じ音型である。モーツァルトのレクイエム(第4曲)やベートーヴェンのミサ・ソレムニス(第10曲)を思い起こさせる部分もあるし、まるでバロックのような曲(第5、6、9曲)もある。また、ワグネリアンらしい半音階の進行もあり(第8曲)、ブルックナーのように純朴な聖歌への共感(第7曲)も感じられる。全体に地味ではあるが、楽想が常にうつろい行く、とても引き出しの多い曲なのだ。

マエストロは、こうした微妙な綾を慎重な手つきで彫琢していく。終始、落ち着いたテンポで、悲嘆の表情は決して大袈裟になることはない。タクトは素人が傍から見ていても意図をうかがえる明晰なもので、澄明な響きを保ちつつ、適度に歌わせ、引き締めるよう細かく指示を与えていた。特筆すべきは声楽とオケのバランスの精妙さである。重厚というよりは慎ましく澄んだオケの響きが、声楽を羽衣のように優しく包み、声楽に呼応して各楽器が印象的に響く。ちょっとでも熱っぽく歌いすぎてバランスが崩れそうになると、すぐに修正の指示が飛ぶ。これはなかなか見ものでもあった。

合唱は、やや軽い響きだったが、バランスの点からいうとむしろ有利だったのかもれない。満足できる出来で、十分な練習を積んでいることをうかがわせた。

声楽陣もマエストロのアンサンブルの意を酌んだ歌唱で、オケと響きを測りながら柔らかに歌い上げ、喉を張るようなところがないのが上品で好ましい。特に、昨年9月の札響定期(尾高忠明指揮、マーラー:交響曲第3番)でも素晴らしいソロを聴かせた、メゾソプラノの手嶋眞佐子は、深みのある声と歌唱で今回も強い印象を残した。

そして何よりオケが繊細な響きを聴かせた。この曲はオケが穏やかで室内楽的な分、各楽器の表情が浮き立ち、意外に難曲である。そのため一日目は幾分ぎこちなさを感じる部分もあったが、二日目は格段にこなれていて、音の置き方、収め方が曲が進むほどうまくなり、和音一つとっても懐深く鳴っていた。例えば、第7曲における弦の温かみ、第8曲における管の柔らかさ、第9曲における低弦のバロック風に弾むような味わい、終曲のフーガにおけるホルンの力強さ等々、印象に残るところが多かった。

なにしろ大編成の大曲である。練習時間も限られている。これだけ丁寧に仕上げることができたのは、マエストロと札響との間で醸成された関係があってこそなのだろう。

客入りは両日合わせて7分程か。厳しい時勢の中、これだけ地味な演目の演奏会としては十分かもしれないが、札幌にも相当数生息する合唱ファンには、もっと足を運んで欲しいと思った。

なお、マエストロは、震災にあたって40万円の義援金を札響に託している。これは会場で集められた義援金と合わせ、赤十字社北海道支部に届けられ、被災地支援に使われるとのことである。

(追記)
知人より第4曲の女声合唱、Sancta Mater, istud agas(聖なる母よ、どうかお願いします)の歌唱に幼さを感じたというコメントを頂いた。この部分は天上から響く天使の歌声というイメージのようで、マエストロより「本来は児童合唱が歌うので、歌う人数を減らし、なるべく音色をつけないように」と指示されたとのことだ。私の手持ちのスコア(Dover)には児童合唱の指定はなく、クーベリック、スメターチェク、アーノンクールは女声合唱で歌わせている。一方、ターリヒは児童合唱を使っている。これがターリヒの解釈なのかチェコの慣習なのかは不明である。
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