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ターリヒの戦前録音を聴き比べる

SP・LPレコードの歴史的録音をCDに復刻する専門レーベル、オーパス蔵は今年10周年を迎え、今月から記念バーゲンセールを行っている。

このレーベルは、レコード・コレクターの安原暉善氏が従来の復刻CDの音質に満足できず、岡山で製作しているもので、保存状態の状態の良いレコードを元に慎重に復刻された音質は世界的にも高く評価されている。

今回のバーゲンでは、チェコの名指揮者、ヴァーツラフ・ターリヒの戦前の録音4点が1枚千円で発売されている。どれも不朽の名盤と呼ぶに相応しいもので、これまでも何度かCD化されてきた。今年はドヴォジャークの6番がナクソスからも復刻され手持ちが3枚となったことから、今回それぞれの音質を比較してみた。

これはターリヒ(当時55歳)とチェコ・フィルが英国に演奏旅行に行った際、英国HMVが製作したセッション録音である。ライナーノートでは演奏史譚家、山崎浩太郎氏が、この録音の時代背景と意義を次のように解説している。

 世界初録音となる交響曲第6番の収録は1938年11月である。時期的には、チェコスロヴァキアの運命が風前の灯火となっていた時期である。
 この年の9月30日、ミュンヘンで行われた独仏英伊の4か国会談の結果、チェコ西部のドイツ語系居住民地域ズデーテンラントのドイツへの割譲が決定した。この会談にチェコは当事者であるにもかかわらず参加を認められず、大国の都合に翻弄される小国の悲哀を味あわなければならなかった。英国首相チェンバレンの弱腰外交は当面の戦争を回避したものの、結局はドイツの国力を増強させることになり、第2次世界大戦を長引かせる結果を招いたといわれる。翌日にはただちにズデーテンにドイツ軍が進駐したが、この録音はそれから1か月後ということになる。
 そして翌年3月にはチェコそのものが併合、スロヴァキアも保護領となり、チェコスロヴァキアは世界から消滅するのである。(山崎浩太郎)


***

1.スプラフォン ターリヒ・エディション盤
スプラフォン
ドヴォジャーク: 交響曲第6番、第7番 
ヴァツラフ ターリヒ指揮チェコ・フィル
復刻者:スタニスラフ・シーコラ、ヤロスラフ・リバーシュ
Supraphon Talich Edition SU3832
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2537124

チェコのレーベル、スプラフォンによるターリヒ・エディションは、全て盤質がゴールドの特別仕様となっており、力が入っていることをうかがわせる。24bitデジタルリマスター。音質の鮮明化を第一とした復刻である。3種類の中では最もオーディオレベルが高く、その分スクラッチノイズが目立たない。しかし、狭いダイナミックレンジの中でオーディオレベルを持ち上げているせいか、ヒストリカル録音の復刻によくあるように、やや音質がひしゃげており、全体にフラットな印象だ。

2.ナクソス・ヒストリカル盤
ナクソス
ドヴォジャーク:交響曲第6番、スーク:ソコル祭典行進曲、セレナード 
ヴァツラフ ターリヒ指揮チェコ・フィル
Naxos 8112050
復刻者:マーク・オーバート=ソーン
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3831006

定評あるマーク・オーバート=ソーンによる復刻。バランスと耳あたりの良さを第一とした復刻である。オーディオレベルはスプラフォン盤ほど高くなく、音質を低域側に調整することにより、スクラッチ・ノイズは抑えられているが、若干、響きが奥まったように感じられる。スークのソコル祭典行進曲が収録されているのは大変貴重だ。

3.オーパス蔵盤
オーパス蔵
ドヴォジャーク:交響曲第6番ニ長調作品60 <1938>
スラブ舞曲第2集作品72 <1935>
ヴァツラフ ターリヒ指揮チェコ・フィル
オーパス蔵 OPK2084
復刻者:安原暉善
原盤:US-Victor SP
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3637695

原盤に収録された繊細な味わいの忠実な再生を第一とした復刻である。
オーディオレベルはナクソス盤と同程度か少し低い。スクラッチ・ノイズは他の2点に比べると目立つが、その分、音質に奥行きと繊細さがある。響きの陰影が大切にされているため、管楽器の柔らかな音色が浮き立って聴こえ、独特の呼吸感で耳をそばだたせるように歌わせる副旋律の表情もより聴き取りやすい。

***

歴史的録音の復刻について、以前は著作権切れの録音を粗雑に安売りするようなものもあったが、最近は随分改善されているように思う。これら3点は皆、原音に敬意を払った良心的なものだが、復刻の方針により微妙な音質の差があり、それが音楽の感興に影響しているのが面白い。

単純な優劣は付けがたいが、私の好みはオーパス蔵である。ターリヒは当時“魔術師”と讃えられたが、その個性はオーパス蔵の復刻で最も明らかだと思う。なによりチェコの音楽家に特有の柔らかな音色の精妙さは2楽章で顕著だ。チェコ・フィルのホルンの素晴らしさは伝統的なものだが、この録音でも戦前のチェコ・フィルにおける綿飴のような響きには惚れ惚れと酔ってしまう。戦争により多くの演奏家が国外に逃れる前のチェコスロヴァキアにおけるチェコ・フィルの貴重な響きを捉えた名人的な復刻を心から喜びたいと思う。


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