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リバのクリスマス・ミサ

Ryba.jpg

今年もクリスマスの季節になった。
この時期、チェコで広く親しまれているのがヤクプ・ヤン・リバ(1765-1815)によるクリスマス・ミサだ。Youtubeにヨゼフ・ラダ風の愛らしいアニメと合わせた画像を見つけた。



J.J.Ryba - Česká mše vánoční - Hej mistře! - 1 Kyrie - animovaný film
http://www.youtube.com/watch?v=o3kIMGCZ75w&feature=related

この曲はCDも何枚か出ている。私が愛聴しているのはブルノ出身のメゾソプラノ、マグダレナ・コジェナーがメジャーになる前の1998年に参加した録音だ。若きコジェナーは、ミサとともに魅力的なパストラルも歌っている。パストラルとは「羊飼いの牧歌」を意味し、クリスマス等の教会行事で歌われる素朴な声楽曲だ。

kozena-ryba
ヤコプ・シモン・リバ:3つのパストラルとクリスマス・ミサ曲集
・パストラル「おお、可愛いナイチンゲールよ」
・パストラル「優しき歌」
・パストラル「なんと愛らしい赤子」
・『チェコのクリスマス・ミサ』
 マグダレナ・コジェナー(メゾ・ソプラノ)
 カペラ・レジア・ムジカリス
 ロベルト・フーゴー(指揮)

 録音時期:1998年9月7日
 録音場所:チェコ、クラドゥルビ修道院

ライナーノートの中でコジェナーは次のように述べている。

このミサはチェコ人には特別な一曲なのです。クリスマスイヴにはチェコ中の小さな教会でアマチュアが演奏するのです。誰もが演奏に参加したがり、別に歌手じゃなくてもかまいません。大きくなると私も自然に歌うようになりました。ソビエトがあった時代、中欧の国々ではクリスマスには特別な魔力がありました。もちろんプレゼントをもらいましたし、音楽も大事でした。でも、なによりバナナやオレンジなど普段買えなかったものが手に入ったのです。私たちはそれらを自分に買うよりも、よくプレゼントしました。クリスマスイヴの早い時間にプレゼントを配り、それから夜中に教会に行ってリバのミサを歌ったものです。

モーツァルトとほぼ同時代人であったリバは、プルゼニュ(ピルゼン)近郊のプレシュティチェで生まれ、プラハで音楽を学んだ後、父親と同様に学校教師兼音楽家であるカントル(kantor)となった。19世紀、モラヴィアとボヘミアでは地方の教育文化活動は、彼のようなカントルが担っていた。彼らは、子供たちに読み書きを教えるとともに、自ら歌い、楽器(ピアノ、オルガン、ヴァイオリン等)を弾きこなして、教会や村の行事で伴奏や合唱団の指揮をすることにより、地域の音楽活動などを支えていた。カントルは非常に貧しかったが村人から尊敬を集め、チェコの伝統継承にも役割を果たしていた。ちなみにヤナーチェクの祖父も父も、『利口な女狐の物語』にでてくる校長先生も、このカントルだ。ヤナーチェクが、ブルノでチェコ・コミュニティの文化リーダーとして活躍したのも、カントルの家系によるところが大きいのだろう。

チェコ民族がオーストリアに支配され、ドイツ語が公用語だった時代、リバは民族意識が高かったのか、その作品はチェコ語に作曲されている。これは近代のチェコ語による音楽としては早い方だ。リバはルソーなどの啓蒙思想に共鳴し、教師としても教育環境の改善に力を尽くしたが、司祭など地域の実力者から反感を買い、心労の末、50歳で自殺してしまう。

このリバの悲劇的な死は、ヤナーチェクの合唱曲「ハルファル先生」を思い起こさせる。その歌詞は公の場でチェコ語を話したため冷遇され自殺するカントルの話だ。

ハルファル先生は心正しく,
物静かで,端正な青年だった。
しかし彼にはひとつ欠点があった,
チェシーンの町でチェコ語を話したのだ。
郡の視学官の前でも!

そんな先生の行状は,
もちろん,カトリック教義の上では罪,
決して黙認されないこと!

歳月が流れ彼の髪は薄くなる
秋を前にした木の葉のように。
ハルファルは助教のままだ。
ハルファルには居場所がない!
(以下略)

レオシュ・ヤナーチェク 声楽曲対訳全集より)

リバのクリスマスミサは、トゥッティの部分が多い素朴な曲で、澄明な響きからどことなくモーツァルトの『魔笛』を思わせるところがある(例えば1幕でザラストロ入場を民衆が称える合唱等)。『魔笛』のプラハ初演は1792年3月なので、リバが影響を受けた可能性はある。その歌詞は、Kyrie、Gloria等、一般的なミサの章立てとなっているがラテン語の通常文ではなく、チェコ語によるクリスマスの物語に沿ったパストラルのようなものとなっている。

このCDでコジェナーが歌っているパストラルも好ましい音楽だ。私はコジェナーの大ファンだが、本当にこの人は可愛らしい個性の音楽家だと思う。いまや大歌手のコジェナを「可愛らしい」などというと大変失礼だが、彼女の歌唱にはどれも、歌が好きでたまらない少女のような無邪気さがあって、それはチェコの歌の伝統と結びついている。コジェナーの来日公演の模様を以前テレビで観たが、ヴォルフを丁寧に歌った後、ドヴォジャークを歌うと、これこそ「我が母の教え給いし歌」という歓びが隠しようもなく滲んでいて微笑ましく思ったものだ。コジェナーファンとしても、この一枚は大切なものだ。

※ちなみにリバと名付けられた小惑星もある。これはコホーテクではなくチェコの女性天文学者ズデニカ・ヴァーヴロヴァー (Zdeňka Vávrová) が1980年に発見したもの。


※参考リンク:関根日出男先生著作集 リバのクリスマス・ミサ Česká mše vánoční
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