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これぞ新世界!~エリシュカ&東フィルを聴く

先週末から上京し、エリシュカ&東フィルによる演奏会を聴いてきた。東フィルはエリシュカが日本デビューを果たした時に客演したオケであり、両者は実に6年ぶりの再会となる。

●東京フィルハーモニー交響楽団  第795回オーチャード定期演奏会
2010年12月5日(日) 15:00開演(14:30開場)
Bunkamura オーチャードホール

指揮 : ラドミル・エリシュカ
管弦楽 : 東京フィルハーモニー交響楽団
曲目:
 スメタナ / 歌劇『売られた花嫁』より3つの舞曲
 スーク / 組曲「おとぎ話」 作品16
 ドヴォルザーク / 交響曲第9番「新世界より」 ホ短調 作品95

(アンコール)
 ドヴォルザーク / スラヴ舞曲第15番 ハ長調op.72-7


『売られた花嫁』の舞曲は、つい先週、札響で聴いたばかりなので、オケの個性による差が興味深かった。札響は響きが軽い分、室内楽的な繊細さに優れ、民俗的な風合いが魅力的で、例えば弦を弓でパンとはじいたりする部分で小技が効く。しかし、ヤナーチェクでは正直もう少し強靭さが欲しいところもある。一方、東フィルは重く厚い響きで、若干もっさりとしており、指揮者と付き合いが長い札響に比べると細かな呼吸への反応は一歩譲るが、高弦など芯があって伸び、全体にダイナミックなのが好ましい。この曲でもスラヴ的な情感よりむしろシンフォニックな迫力を感じるものだったように思う。エリシュカの解釈は、いずれのオケでも揺ぎなく、きっちり鳴らしていた。

ドヴォジャークの娘婿、ヨゼフ・スークは内気で繊細なロマンチストといった個性の作曲家。22才の作品「おとぎ話」はドヴォジャークのような民俗的な要素は少ないが叙情的な味わいはいかにもチェコ的で、地味ながら時折はっとするような色彩が現れる。そして、その色彩の滲み方はフランス音楽などと違って実に慎ましやかなものだ。この曲のそんなニュアンスをエリシュカは、フレーズを発する時の微細な間、音の置き方等、老練な技を駆使して丁寧に聴かせた。ヴァイオリンのソロが活躍する曲だが、東フィルはコンマス荒井英治を軸に洗練された演奏を展開し、この公演の中では最も完成度が高かったように思う。

そして、”通俗名曲”「新世界」。この作品が名曲であることは私も異論がないのだが、あまりに旋律の効果が表立っているため少々鼻白む印象もあった。実際、クラシック愛好家には、「新世界」をお気に入りとするのは照れくさく、8番や7番を評価するほうが”通”とする向きもあるだろう。だが、ドヴォジャーク研究者のほとんどは、この曲を円熟したシンフォニイストの到達点と評価している。そんなこともあり、私がドヴォジャークに凝って調べるほどに、この作品をどう位置づけるべきかが気になる問題として膨らんでいた。今回、無理をして北海道から上京したのも「新世界」の真価を早く確かめたかったからだ(来春の札響定期は「スターバト・マーテル」なので、とても待ちきれない!)。

期待通り、チェコ・ドヴォジャーク協会会長であるエリシュカの演奏は耳慣れたこの曲の精巧さを改めて示すものだった。例えば2楽章、イングリッシュホルンで奏される主題「家路」を支える弦の弱奏。通常なら伴奏として扱われるこういう部分を若干遅目のテンポで丁寧に歌う。それにより副旋律が鮮やかに示され、内声部まで隅々歌い、テクスチャが豊かに反響していく。結果、旋律の魅力が大きすぎるがゆえにフラットな印象だった音楽にグッと奥行きが生まれ、独特のスケール感がでてくる。3楽章などまるでブルックナーのスケルツォのように何か巨大なものが鳴動しているようだ。ドヴォジャークの総決算的な作品だというのが納得出来る内容で、先達(ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ワーグナー等)の影響とスラヴ、アメリカ的な要素がハイブリットしていて、細部に至るまで無駄がなく感興に結びついている。引き締まったアンサンブルにより各楽章の描き分けも巧みで、循環形式による統一感も十分だった。

面白いのはエリシュカが特別な個性を発揮しているわけではないこと。これまで札響と聴かせた5、6、7番のように誠実さに徹した演奏だが、そこから生まれる演奏はユニークそのものなのだから、まだまだドヴォジャークは奥深いのだろう。「新世界」には膨大な録音があるが、チェコ人によるものも含めて、このような演奏は聴いたことがない。本当にこの曲は演奏が難しい作品だ。今回の東フィルとの演奏はシンフォニックなスケール感があった反面、チェコ的な味わいは薄目だったので、札響とならチェコ的な性格がより強く現れ、違った面を見せることだろう。録音も含め、今から楽しみだ。

演奏会後、関根日出男先生樋口裕一さんISATTさんアリスさん等、当会会員数名とお会いしたが、皆、口々に「新世界で涙が出るとは思わなかった」「いままで聴いてきた新世界はなんだったんだろう」と興奮混じりに語っていた。

終演後、マエストロを訪ね、こう挨拶した。
「ありがとうございます、マエストロ。今日初めて新世界を聴きましたよ!」
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