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ルーセルの影響、プロシャ軍の記憶

先日、当会顧問の関根日出男先生が以下のようなメッセージと共にカセットテープを送って下さった。

今日はクイズのテープを別送します。
ヤナーチェクが「青春」、とくにその第3楽章を書くきっかけになったのは、国際現代音楽協会(ISCM)主催の室内音楽祭に出席した折に聴いた作品だそうです。
作曲者を当てて下さい。


7分ばかりの軽快で色彩的な管楽アンサンブルの作品。ヤナーチェクは、ドヴォジャークは例外として、他の作曲家からあまり影響を受けなかったように思っていたが、この曲は木管六重奏「青春」やコンチェルティーノ、「わらべ歌」などの響きを思わせ、大変面白かった。

一聴してフランス系の作品であることは疑いなく、どことなくマルチヌーを思わせる。マルチヌーでないなら師のルーセルあたりかと関根先生にお電話したところ「正解!」とのこと。曲目は次のとおりで、実は私もCDを持っていた

アルベール・ルーセル(Albert Roussel, 1869-1937)
 ディヴェルティメント(Divertissement)Op.6(1906/1906初演)
 [fl,ob,cl,fg,hrn,p]



ヤナーチェクは、1923年8月、ザルツブルクで開かれた国際現代音楽協会(ISCM)主催の第1回室内音楽祭に招待され、第4日目(8月5日)には、ヴァイオリン・ソナタが演奏された。この音楽祭では200曲余りの現代作品から38曲が選ばれ、プロコフィエフ(当時の年齢:32歳)、シマノフスキ(41歳)、ウォルトン(21歳)、ブリス(32歳)、カステルヌオーヴォ=テデスコ(28歳)、ストラヴィンスキー(41歳)らの作品が紹介された。69歳のヤナーチェクは中でも最年長の”前衛”作曲家だった。そこでヤナーチェクが特に心惹かれたのは、パリ現代管楽合奏団が演奏したルーセル(54歳)によるこの作品だった。(ちなみに微分音楽の開拓者であるチェコの作曲家、アロイス・ハーバは、ヤナーチェク以外にチェコから選出されたニ人のうちの一人で、この時にヤナーチェクと知り合い、後に彼の音楽を研究した。)

1ヶ月後にヤナーチェクは「青い服の少年の行進曲」(ピッコロ、鐘:グロッケンシュピール、タンバリン、※タンバリン、鐘の代用としてピアノも可)を作曲する。独特な響きの可愛らしい小品だ。青い服とはヤナーチェクが属していた少年聖歌隊の制服で、この曲には彼が12歳だった1866年、普墺戦争時にプロシャ軍がブルノに駐留した時の思い出が反映されている。1924年、ヤナーチェクは地元紙に『イェヌーファ』が上演されたベルリンに関する原体験として次のように記している。

1866年の夏の休日、ブルノのクラーシュタニー広場はプロシャ軍の赤とグレーで一杯だった。ブリキの太鼓の響きが渦巻き、その上をピッコロの高音が軋んでいた。略奪者の音楽。今でも耳に残り、鳴り響いている。12歳の少年だった私は耳をそば立たせ、ブルノのペカジャスカー通り、ヴィーデニュカ通りでプロシャ軍が大騒ぎしているのを聞いていた。これがベルリンに関する最初の知見だった。いわゆる「三度目の正直」だ。
(1924年5月15日リドニー・ノヴィニ紙 「ベルリン」)
Janáček's Uncollected Essays on Music (Mirka Zemanová 編)に収録された英訳より


ヤナーチェクは、音楽祭の翌年、ルーセルの作品に刺激されて木管六重奏「青春」を作曲、「青い服の少年の行進曲」はこの第3楽章に用いられた。



プロシャ軍の記憶はよほど強烈だったのか、ヤナーチェクは、シンフォニエッタ(1926)の第4曲にも「街頭」というタイトルを付け、喧騒と混乱を再現している。この曲は、「青い服の少年の行進曲」と相似した主題で、やはり”鐘”とピッコロが活躍する。


【青い服の少年の行進曲~「青春」第3楽章主題】
blue-boy-march.jpg


【シンフォニエッタ 第4曲主題】
sinfonietta4.jpg

※譜例はクリックすると大きくなります。

先日の記事でも書いたように今年4月の札幌交響楽団定期でシンフォニエッタを指揮したエリシュカは、4曲目に慣用されるチューブラーベルではなくグロッケンシュピールを使用した。これはヤナーチェクの高弟ブチェティスラフ・バカラの明確な指示によるとのことだが、こうして調べてみるとなるほど正当性があるようだ。なぜなら「青い服の少年の行進曲」もシンフォニエッタと同様に楽譜上は単に「鐘」と記されているが、チューブラーベルを抱えて行進するわけにはいかないので、これは曲想から言っても本来グロッケンシュピールの一種であるベルリラととるのが妥当だろうから。

異国の兵士が見慣れた街頭を埋め尽くす異様な光景、緊張した空気、軍楽隊の喧騒、それらに重ね合わされる少年聖歌隊の記憶。こうした背景を知ると暴力的な活気に満ちた雰囲気が「青春」からもシンフォニエッタからもよく伝わってくるように思う。マエストロ、エリシュカが指揮した渾身のシンフォニエッタで是非確かめて欲しい。

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