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ハイティンク&コンセルトヘボウ管の「夜の歌」

長らく私の「捜し物リスト」にあったCDが、タワーレコードから再発された。有り難し!

Haitink_Mahler7

マーラー: 交響曲第4番, 第7番「夜の歌」
ベルナルト・ハイティンク(指揮)
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
ロバータ・アレグザンダー(ソプラノ)
1982年12月(7番)/1983年10月(4番)

マーラーは若い頃に随分聴いたが、ブルックナーへ関心が移ると一部の作品を除きほとんど聴かなくなってしまった。この作曲家の青年文士じみた苦悩のポーズに嫌気がさしたからで、特に「巨人」など耳に入ると以前好んでいただけに居たたまれない気分になる。捻りのない旋律を延々とこねくり回す交響曲は、胃腸が弱くなった身にはいやに長く重く感じられる。これに比べたらドヴォジャークの楽想の豊かさとその見事な連係、ヤナーチェクの短い楽句に賭ける大胆さはなんと潔いことか。こんなことを書いたらマーラー好きに怒られそうだが。

出世を極め、年若い美人の才媛を娶る一方で、これだけ情緒的な音楽を大規模に書き連ね、50歳過ぎに厭世的な諦観の境地に至り、ぽっくり亡くなってしまうというのは、かなり変な男だ。まあそう言うなら老いらくの恋に狂い70歳を過ぎてシンフォニエッタを書いたヤナーチェクも相当変だが。

私が例外的に好むのは「大地の歌」と7番で、前者の東洋趣味、後者の幻想味が、作曲家の心情告白や思想哲学ぶったものを多少とも薄めてくれるように感じるからだ。

このハイティンクの録音は以前LPで持っていたもので、7番の印象はこれで刷り込まれているため、他の演奏で聴いてもなかなかしっくりと来ない。そんな訳で、時折、ヤフオク等を漁っていたのだが入手困難だった。

今回、山下雄大氏が書き下ろした詳細なライナーノートによると、ハイティンクは62~72年にマーラーの交響曲全集を録音し、80年代に入りコンセルトヘボウ管とデジタル再録音を始めたが、これが完結しないうちに、87年からベルリン・フィルと全集録音を開始したとのこと。しかし、このベルリン・フィルとの新全集も未完に終わり、これが円熟期の選集として彼の代表作となる。そのような経緯もあり、このコンセルトヘボウ管との録音は埋もれてしまったそうだ。

ハイティンクは、オケを丁寧に鳴らす指揮者だが特に強い個性を主張するわけではないので、正直、個人的にはそれほど思い入れがある音楽家ではない。しかし、演奏が曲の性格にはまるととんでももなく良い成果を生むようで、この録音も「いい仕事していますねぇ」と感嘆するほかない。ハイティンクはこの作品のグロテスクで不安定な面を強調するより叙情的な味わいを穏やかに描く。これが実に良い。マーラーを聴くならバーンスタインやテンシュテットのような渾身の名演よりハイティンクの演奏の方が私には心安らかに聴ける。

それにしても、ここで聴かれるコンセルトヘボウ管の響きの質感は全く素晴らしい。オケの一つの理想ではないだろうか。細工の確かな高級家具のような温かみと落ち着きがある。92年のベルリン・フィルとの録音もオケの実力を十二分に発揮した名演だが、コンセルトヘボウ管の渋い音色と響きのコクは比類がなく、一音一音、余韻と陰影を浮かび上がらせる録音も見事で、ひんやりとした夜気を感じるような叙情味は格別だ。やはり1、2楽章が聴きごたえがあり、本当に夕映えを見渡すように美しい瞬間がいくつもある。もっとも、この曲は後半が少々弱く、終楽章で唐突に炸裂するお祭り騒ぎは何度聴いてもなんじゃこりゃと思うが、オケが上質なおかげで安っぽい印象から救われている。

散々マーラーを腐したけれど、正直、この独特に歪な味には惹かれるところも多い。それに近頃はマーラーのチェコ系ユダヤ人としての肖像に興味を持っている。もっともマーラーは自身をオーストリア帝国民であってチェコ人だなどと思ったことはないだろうけれど。

ヤナーチェクがイェヌーファで国際的な名声を勝ち得たのも、ブロートをはじめ、帝国の近代化の下で社会的地位が著しく上がったユダヤ人の力が大きいと思う。ヤナーチェクは、帝国の支配を憎む熱烈なスラブ主義者だったが、彼に国際的なチャンスが与えられたのは帝国あってこそではないか、などと思ったりする。この辺の事情は複雑なので、ぼちぼち調べてみたい。
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