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バルトーク・レコーズとワルター・ジュスキント

バルトークレコーズ
バルトークの息子ペーテル・バルトークによるレーベル、バルトーク・レコーズのCDを3枚入手した。

ペーテルは父から特に目をかけられていて、ミクロコスモスが彼のピアノ学習用として作曲されたことはよく知られている。戦後、彼は米国でアイディア豊かな録音技師として活躍し、モノラルにこだわった優秀録音により父の作品を主とするLPを製作した。これは演奏の質とともに高い評価を受けており、音質劣化を避けるため贅沢にカッティングされたLPは愛好家には垂涎のものだった。当会顧問の関根日出男先生も、駆け出しの医師として北海道上砂川の病院に勤めていた頃、当時高価だったLPを取り寄せ、擦り切れるまで聴き込んだという。

ペーテルは、ステレオ時代以降、諸事情により長く活動を休止していたが、数年前から往年の名録音を復刻したCDの販売をはじめた。そして、今年になって彼と親交のある山形在住の愛好家がバルトーク・レコーズ・ジャパンを設立して我が国での販売を開始したので、早速入手した。

●バルトーク:歌劇『青ひげ公の城』
 ヘルヴィグ(ジュディス)、コレーフ(青ひげ)
 ウォルター・ジュスキンド指揮、ロンドン・ニュー・シンフォニー交響楽団
 1953年、モノラル録音


●バルトーク:カンタータ・プロファーナ~魔法の鹿、
 4つのスロヴァキア民謡(混声合唱)、27のハンガリー民謡から(女声合唱)
 ヴィオラ協奏曲

 ルイス(T)、ロットミュラー(Br)、ウォルター・ジュスキンド指揮、ロンドン・ニュー・シンフォニー交響楽団/マーガレット・ヒリス指揮、コンサート合唱団/プリムローズ(Va)、ティボル・シェルリ指揮、ロンドン・ニュー・シンフォニー交響楽団
1950年、モノラル録音

●バルトーク:かかし王子(バレエ音楽全曲、初版に基づく)
 ウォルター・ジュスキンド指揮、ロンドン・ニュー・シンフォニー交響楽団
 1953年、モノラル録音

期待に違わず、どれも本当に素晴らしい演奏・録音だった。圧巻は「青ひげ公の城」で、このジュスキントによる録音は、オケの響きに込められた質感が魅力的で、ケルテス、ドラティによるものと比べても、この地味な象徴劇を説得力豊かに聴かせていた。私は、以前からバルトークの音楽に独特の気が発散するような印象を抱いていたので(例えば湿った夜気の中で滲み出す草木の気のような)、この演奏の濃密な感触は、クリアなステレオ録音とはまた違った味がある録音と共にとてもしっくり腑に落ちた。

ジュスキント
ここで指揮をしているワルター・ジュスキント(Walter Süsskind)は、私には伴奏指揮者というイメージが強かった。初めて聴いたのはグールドのモーツァルトで、他にもハイフェッツ、フルニエ、ソロモン、ブレイン、フラグスタート、シュワルツコップ等、錚々たる面々と共演した録音が多数残されている。しかし、彼単独の録音は意外に少ないので、今回聴いたバルトークの演奏には驚かされた。しかも私はてっきりジュスキントがペーテルと親交のある亡命ハンガリー人と思っていたが、実はプラハ生まれのユダヤ系のチェコ人でヤナーチェクとも縁の深い音楽家だった。

ジュスキントは1937年にプラハで生まれ、プラハ音楽院でピアノと作曲※を学び、その後、ジョージ・セルの下で指揮を学んでいる。
※作曲はヨゼフ・スークとカレル・ハーバ(「微分音」で有名なアロイスの弟)に師事した。

1937年にはアンチェルが中心となったヤナーチェクの特集コンサートでコンチェルティーノを演奏しており、この時のプログラムにヤナーチェクについて書いている。1938年にナチがチェコスロヴァキアに侵攻すると英国に亡命し、ヤン・マサリクの援助を受け、英国に帰化した。この時期、チェコ・トリオのピアニストとして1942年まで活躍し、1941年からは指揮者として本格的に活動をはじめている。以後、伴奏の録音が多いのは、セルの薫陶を受けたオーケストラビルダーとしての確かな能力と、室内楽で培ったアンサンブルの感覚が、重宝されたためだろう。もちろん指揮者としては、協奏曲に限らず幅広いレパートリーで着実にキャリアを固め、1971年にはニューヨーク・シティオペラで『マクロプロスの秘事』を米国初演している。

ちなみにワルター・ジュスキントの弟にあたるチャールズ・ジュスキント(Charles Susskind)はカリフォルニア大学バークレー校の電子工学教授だったが「ヤナーチェクとブロート」という著作も残している。ブロートがカフカとともにヤナーチェクの国際的評価獲得に尽力したのはよく知られているが、この本にはその経緯が詳細に記されている。本書は兄に捧げられており、付録としてワルターが残したヤナーチェクに関する文章が2編収められている。

残念ながらジュスキントによるヤナーチェクの録音は残されていないが、ドヴォジャークの協奏曲集は廉価盤で容易に入手できる。これはフィルクシュニー(Pf)、リッチ(Vn)、ネルソヴァ(Vc)という名手3人と共演したもので、手兵のセントルイス響も好演している。豊かな曲想の有機的な展開、質感ある音色、整ったオケの響きにより示されるドヴォジャークは、エリシュカの解釈とも一脈通じるものを感じる。これは本当に良い録音だと思う。


※関根日出男先生にジュスキントについて問い合わせたところ丁寧な解説を頂いた。これは関根日出男著作集にアップしたので、詳しくはそちらをご覧頂きたい。

ジュスキント Hanuš(Jan) Walter Süsskind(1913~80
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