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ヤナーチェク、グラゴール・ミサについて語る~その1

今月、18,19日、大阪フィルがグラゴールミサを演奏するのに関連して、ヤナーチェクがこの作品について語った記事の訳を試みた。
以下はヤナーチェクの著作の中でも比較的有名な文章で、Janacek's Uncollected Essays on Music (Mirka Zemanova 編)に収録された英訳からの重訳である。

私の訳が拙いせいもあるが、元々、原文が詩的なイマジネーションを自由に書き綴ったものなので、少々読みにくい点はご容赦願いたい。

*******
●グラゴール・ミサについて /レオシュ・ヤナーチェク
(Lidové noviny 「人民新聞」、1927年11月27日)

何故これを作曲したのか。

ルハチョヴィツェ(※温泉保養地)では雨が降り続き、窓からは陰気なコモニュ山が見えた。雲は渦巻き、強風が雲をちぎって散り散りにしていた。

ちょうど一月前、フクワルディの校舎前で見た光景と同じだ。私たちは雨の中で立ちつくしていた。傍らには大司教(※1)が居た。

夕闇が深まり雷光が暗夜を切り裂く様を私はじっと見つめていた。天井の電灯を点けると、沈んだ気分の静かなモチーフが'Gospodi pomilui' (主よ憐れみたまえ)という文句に浮かび、それを書き留めずにはいられなかった。

そして次々に書き留めた。
'Slava, slava'(栄光あれ、栄光あれ)には歓喜の叫びを。
'Raspet že za ny, mučen i pogreben jest!'(われらのために十字架につけられ、苦しみを受け、葬られ給えり。)には、引き裂かれるような苦痛を。
'Věruju'(我は信ず)には、堅固な信仰と誓いを。
'Amen, amen'(アーメン)には、全ての熱狂と錯乱の頂点を。
'Svet, svet, Blagoslavl'en Agneče Božij'(聖なるかな、聖なるかな、ほむべきかな神の子羊。)には聖なる栄光を。

中世の修道院の独居房の陰鬱さでもなく、
模倣で踏みならされた道でもなく、
バッハ風の入り組んだフーガの構造物でもない。
ベートーヴェンのパトスでもなく、
ハイドンの遊戯性でもない。
それはクシーシュコフスキーから我々を引き離そうとする文書の壁(これはヴィットの改革によるものだが)に抗するものだ。(※2)

今日、ほのかな月明かりが私の走り書きと楽譜の上に差し込み、明日には陽の光が隅々まで照らす。
一時指が凍えるが、すぐに暖気が窓から吹き抜ける。
ルハチョヴィツェの森の爽やかな香りが私を包む。
巨大な山に聖堂が浮かび上がり、霧に煙り彼方まで伸びる空がその丸天井となる。
聖堂の鐘は羊の群れから聞こえるベルの音だ。

私は聞く。
テノールの独唱に司祭の声を。
ソプラノの乙女に天使の声を。
合唱に民衆の声を。

いずこかで行われている儀式では、高い樅の樹々の上に煌めく星々が蝋燭となり、聖ヴァーツラフの尊像が浮かぶ。私には聖キュリロスと聖メトディオスの伝道の言葉が聞こえる。

3週間にわたる療養生活が過ぎる前に作品は完成した。
私の作曲は安易な即席だとネイエドリィ博士が非難するのにも一理ある。(※3)

この作品は、12月5日にブルノの会堂で初演される。私は何よりまずタウバー氏とチヴァノヴァー夫人の歌を賞賛したい。また、出番は僅かだが印象的なフロウショコヴァー夫人とニェメチェク氏の歌唱、合唱の瑞々しい声と発音の確かさも賞賛したい。

このオーケストラにはマスカーニでも満足するだろう。ブルノフィルハーモニック協会(※合唱団)も指揮者のヤロスラス・クパヴィル氏にはきっと満足するだろう。

*****
※1)オロモウィッツのプレチャン大司教。宗教曲の貧困を嘆くヤナーチェクに作曲を勧めた。

※2)ヴィット(Francis Xavier Witt):1870年代にドイツを中心に起こったセシリア運動の指導者。セシリア運動とは、近代の非典礼音楽を排斥しパレストリーナ以前の教会音楽に回帰しようとするカトリック教会音楽改革運動で、ヤナーチェクの師だったパヴェル・クシーシュコフスキーはこの運動に反対した。

3)ネイエドリィ(Zdeněk Nejedlý):チェコの音楽学者。強硬なスメタナ派としてドヴォジャークやヤナーチェクを攻撃した。戦後は共産主義政権下で文化大臣を務めた。
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