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パネンカの「霧の中で」

日本コロンビアから好評の廉価盤シリーズ、クレスト1000第5集が発売になっています。貴重な録音を選りすぐり、とても数が捌けるとは思えないものをこの価格で提供するのだから、今時稀有な商売っ気を超えた善意を感じずにはいられません。

イヴァン・モラヴェツやスーク・トリオ、先日亡くなった巨匠ボフミル・グレゴル等、今回も渋いラインナップでどれも魅力的ですが、中でも私が狂喜したのはヤン・パネンカによるヤナーチェクのピアノ曲「霧の中で」の録音で、よくぞCD化してくれたと思います。パネンカについては何度かここにも書きましたが想いが通じたようです。


●ヤナーチェク&スメタナ:ピアノ曲集
 ヤナーチェク:「霧の中で」
 「草かげの小径にて」から「フリーデックの聖処女」
 スメタナ: ポルカop.7-1
 チェコ舞曲第7番「槍騎馬兵」
 演奏会用練習曲op.17~浜辺にて
 バガテルと即興曲集~第6番「おとぎ話」
 ヤン・パネンカ(P)

「霧の中で」は、ヤナーチェクがオペラ作曲家として世に出る見込みも立たない不遇な時期、まさに五里霧中の情況で書かれたピアノ曲の傑作です。

この曲の名盤といって私の頭にまず浮かぶのはヨゼフ・パーレニーチェクのものでしょうか。パーレニーチェクの解釈は、ヤナーチェク独特の前のめりのパッセージをアグレッシヴに処理することにより、生々しい感情をぶつけるような、非常に人間臭いもので、この様な演奏で聴くと激情家だったヤナーチェクの無為に老いていく焦り、苛立ちが心の叫びとしてストレートに伝わってくるようです。この録音は、長らく私のこの曲のイメージを支配してきたものでした。

ところが今回のパネンカの録音はパーレニーチェクとは全く対照的な解釈で、不安と迷いを抱えつつ静かに自らの内面に下りていくような内省的な音楽作りになっているのが驚きでした。パネンカの演奏はどれも真摯で誇張ないものですが、この曲でも、時折ふと立ち止まりつつ黙考するように、じっくりと歩みを進めていきます。特に素晴らしいのは弱音部の表現で、フレーズが分解する寸前まで間を十分とりつつ、音を浮き立たせ消え入るように歌わせるなど、一音ごと、休符ごとの瞬間が胸にせまってくるように思えます。

これらはどちらが優るとは云えない、両者とも本当にヤナーチェクらしい演奏です。しかし、今回の一枚はパネンカという一見地味なピアニストの凄味を伝えていて、私には特に貴重なものです。(フィルクシュニーやシフは中庸の名演といえるでしょう。)

それにしても「霧の中で」は大人の苦味が滲む曲ですが、マーラーやブラームスのような諦観や自己憐憫とは無縁なのがヤナーチェクらしい。その分、きつい音楽でもあります。
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