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エリシュカ&札幌交響楽団による「我が祖国」のCD

ラドミル・エリシュカ札幌交響楽団による待望の新譜、スメタナの「我が祖国」が発売された。

エリシュカ「わが祖国」


●スメタナ:連作交響詩『我が祖国』
ラドミル・エリシュカ(首席客演指揮者)指揮 札幌交響楽団
(2009年10月30日 札幌コンサートホールKitaraにてセッション収録)

メーカー:オフィス ブロウチェク 
レーベル:パスティエル
品番:DQC425(2CD※)
定価 2,800円 (税込)
※音質重視のため2枚組となっております。


まず一聴して、なによりチェコ人に聴かせたいと思った。できることならプラハに飛んで、ティーン教会前の旧市街広場に屋台を出して街頭で売り歩きたいくらい。チェコ人は極東のオケが奏でる正統なるチェコ節に、JEROの演歌を聴く日本人のように驚嘆するのではないか。

20年前のビロード革命後にクーベリックがチェコフィルを振った歴史的名演以降、これほどチェコ的な味わいの深い「我が祖国」の録音はなかった。チェコフィルを振ったターリヒ、アンチェル、シェイナ、スメターチェク、ノイマン等の名盤とも遜色なく、細やかな味わいと言う点では、むしろ優っているところさえある。そしてなにより共感に満ちたオケの響きが実にいい。これは近頃の札響の好調を証明する代表的録音として大いに誇れるものだ。まさに世界レベルの演奏である。

碩学の評論家、片山杜秀氏もライナーノートで次のように書いている。

◆エリシュカと札響は「本場物」を超えた!

 「日本のオーケストラにしては立派な《わが祖国》ですね」なんて、もしもどこかで言う人があれば、甚だ乱暴な物言いで恐縮だが、思わずぶっとばしたくなってしまう。
 そのくらいの出来ばえだ。スメタナのわが祖国、チェコのオーケストラによる名録音と比べたって遜色ない。いや、それどころか、これまで親しまれてきたもろもろの「本場の演奏」。さらには「非本場(たとえば独墺や英米)の演奏」ではなかなか得られなかった味わいが、ここにはある。
 ラドミル・エリシュカというチェコのすぐれた指揮者と、彼の棒に素直に応じつつ高い機能性を発揮した札幌交響楽団という日本のオーケストラとの組み合わせによってこそ、初めてなされたよい演奏だ。


笑っちゃう程の絶賛である。片山先生がぶっとばすなら私も加勢しよう。
しかも、ただの賛辞ではなく、ターリヒ、アンチェルらの歴史的名演と具体的に比較した鋭い分析が大変に興味深い。私が唸った一文は次のとおり。

....そんなエリシュカの《モルダウ》の冒頭は、まさにターリヒ流とアンチェル流の彼なりの総合であり止揚になっている。.....

 ターリヒ流に音の長さをいじって雰囲気を出すのではない。そこはアンチェルに近く、きっちりやる。しかし、アンチェル流よりも、音の強弱を色濃くし隈取るようにすることで、弾みをつける。モルダウ川の源流に相応しい、ほとばしる勢いのある歌を生む。念のために確認すれば、その歌とは、音の長さの伸縮から生まれる人声らしい歌よりも、音の強弱のいちいち細かなメリとハリの対比から生まれる、すこぶる器楽的な歌なのだ。



本質を衝いた批評。こちらにも脱帽する。さすが私のようなミーハーがスゴイスゴイと騒いでいるのとはわけが違う。

この録音は、昨年10月の「札響名曲コンサート」における同曲の公演の前日にKitaraでセッション収録されたものだ。演奏については、N響札響との公演について記した感想と基本的に変わらないが、今回のCDに特徴的なのは、セッション録音の良さが出ていることだ。

まず残響豊かなKitaraのアコースティックが活きていることがあげられる。これまでリリースされた2枚のライヴCDは、いずれも4月の定期演奏会におけるものだが、この時期、札幌はまだまだ寒い。しかも札響の定期会員は高齢化が進んでいるから、どうしても厚着の聴衆がホールを埋め、響きを吸ってしまう。セッション録音では、このような障害がないから、豊かな残響が保たれ、弦も管もいっそう潤い豊かに、奥行きをもって響くので、オケを端正に引き締めながら懐深い叙情を滲ますエリシュカの演奏のコクが十分再現されている。ドヴォジャーク・ホールなどチェコのホールは、たっぷりした残響があるが、それに近い響きになっているのだ。またトータルの演奏時間は76分37秒で、通常ならギリギリ1枚に納めるところだが、高音質を確保するため2枚組としたのも良い効果を生んでいる。

そして、ライヴ録音と違い、奏者がリラックスしているのがわかる。ドヴォジャークの交響曲7番等で聴かれるライヴならではの緊張感と熱気も素晴らしいが、本録音の演奏は、昨年10月の公演時よりさらに伸びやかで、管楽器などの名技性が発揮されていると思う。このセッション録音は、和やかな雰囲気の中、スムースに進んだとのことだ。曲ごとに全体を通し、エンジニアのモニターにしたがって最小限の録り直しを行ったとのことで、「シャールカ」などほとんど録り直していない。そのためかセッション録音とはいっても全体的な流れが良く、ライヴのような呼吸感が保たれているのも素晴らしい。

当会は発足以来12年目を迎え、私は、今、これまでの活動を回顧する特集を組んだ会報編集を行っている。この12年間を振り返るに、「我が祖国」をはじめとするチェコ音楽の演奏は国際化し、お国モノを超えた一般的なレパートリーになったと思う。これは大いに喜ぶべきことだが、反面、地方色や伝統的な響きが薄れつつある寂しさも感じている。そんな中、ビロード革命以降、チェコ国内では不遇だったマエストロが、我が国でこのような形で成果を残すというのは意義深いことではないだろうか。

Perfumeファンのエコノミスト、小幡績氏「窯変理論」 なるものを唱えているが、これによるならばエリシュカの我が国での活躍は典型的なPerfume型展開だ(笑)。つまり、もともと広島のローカルアイドルだったPerfumeのように、地方から火がつき、トップダウン的にスターとして売り出した訳ではなく、ボトムアップから評価が拡大した。アーチストの実力といえばそれまでだが、これは随分ユニークな社会現象だろう。エリシュカと札響との幸運な出会いが生んだ”「本場物」を超えた ”名演は見事な窯変と言えるだろう。


※関連リンク
チェコの指揮者 ラドミル・エリシュカのページ
ラドミル・エリシュカ物語
ラドミル・エリシュカRadomil Eliška のこと(関根日出男先生著作集より)
エリシュカ&札幌交響楽団の『我が祖国』(2009年10月31日 札幌交響楽団名曲コンサート レヴュー)
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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