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アルド・チッコリーニ 札幌公演2005

いよいよ待望の日。チッコリーニの来日ツアーの皮切り、札幌公演の報告です。

○アルド・チッコリーニ 札幌公演2005
10/26(木)19:00開演(18:30開場)
札幌コンサートホールKITARA 大ホール

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調Op.110
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番  へ短調「熱情」Op.57
         ***
ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ
ファリャ:4つのスペイン小曲集 
《アラゴネーサ/クバーナ/モンタニェーサ/アンダルーサ》
ファリャ:アンダルシア幻想曲

アルド・チッコリーニ(ピアノ)
Piano:FAZIOLI F278


2年ぶりに再会したチッコリーニは随分衰えた印象で、体をようやく引きずるようにステージに現れた様には少々不安を覚えました。

そして始まった1曲目はベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番。この晩年の傑作を初っ端から取り上げるのはプログラミングとして異例のことで気になっていましたが、聴き終えて得心しました。実に虚心坦懐な演奏です。

この時のファツィオーリは色彩的な華やかさを抑え、むしろベーゼンドルファーを思わせるような渋く重心の低い響き。解釈は細部に至るまでオーソドックスで、多分、数年前の彼ならば、もっと粋な個性を示す弾き方をしたかもしれません。かといって決して枯淡の味わいでもなく、瑞々しく強靭な響きは保たれ、音が在るべきところに在る無心さに安らぎを感じるような演奏でした。

静かな感動に包まれた後の2曲目は「熱情」。これがこの日の白眉でしょうか。聴き慣れたこの曲にこれほど衝撃を受けるとは正直予想もしていませんでした。解釈は前曲と同様にあくまで正統的ですが、慰藉に満ちた31番とはタイプの違うアグレッシヴな中期の傑作にピアノの響きは一転してスケールを増し、その対比を強く印象付けられたように思えます。第1楽章の畳み掛けるような展開の彫りの深さ、そして第2楽章の温かい歌にさりげなく交じるファツィオーリならではの音色の妙に身震いし、3楽章では和音が力強く鳴るたびにベートーヴェンの音楽の途方もない巨大さに打ちのめされるような気がしました。第九交響曲やミサ・ソレムニスならともかく、ピアノ曲でこんな感覚を味わうとは。それにしてもこの31番から「熱情」へのカップリングは演出として絶妙です。

正直、私は前半の感動があまりに大きく、後半は少々腑抜けた状態で聴いていました。ラヴェルは後半のプログラムが短いせいか急遽追加された曲目で、おそらくチッコリーニの来日時の体調を見ての措置なのでしょう。これもフランスものを得意とするチッコリーニらしい見事な演奏でしたが、ある意味、想定内の演奏で平静に聴けました。

惚けた私がようやく私が正気を取り戻したのは、ファリャの途中から。チッコリーニはファリャの曲集を続けて30分あまり一気に弾き切りましたが、この止めどなく沸き立つ生命力にまたもや圧倒されました。ファツィオーリは、2年前、ドビュッシー、ショパンで聴いたエーテルのように移ろう響きとはまた違ったソリッドな質感で、陽光のような明るさと暖かさが際立っていました(多分、前回とは調律も全く異なるのでしょう)。そして曲の後半、高揚の上に高揚を重ね、いつ果てるともしれない音楽に、なにか「春の祭典」でも聴くような眩暈さえ覚えました。もしチッコリーニ以外のピアニストがファリャを同じように、まとめて弾いたなら飽きてしまったかもしれません。改めてチッコリーニの力技に驚嘆させられました。全く、見た目はようやっと歩いているような老人なのに!

ステージ上の巨匠は相変わらずのムッツリとした風ですが、観客の熱い反応に上機嫌の様子で足取りも幾分しっかりしてきて、この後、何とアンコールを3曲も弾いてくれました。

シューベルト:クーフェルヴィーダーワルツ
ドビュッシー:前奏曲集第1巻から ミンストレルズ
ファリャ:火祭りの踊り

これらはサービス精神に溢れた実に心憎い演奏で、この日の締めにふさわしいアンコールでした。最後は観客もスタンディングオベーションで応えて巨匠を見送り、感動のうちに札幌公演は終わりました。

私は2年前、チッコリーニについて「老いて深まりこそすれ枯れない巨匠」と書きましたが、今日、衰えることない気力と技巧を確認し嬉しい限りです。年とともに体力の低下は避けられないとしても、チッコリーニのピアニズムはきっと変わらないでしょう。十分に養生し、たとえ1曲しか弾かないとしても、再びKitaraのステージに登場して欲しい。熱烈なファンとして、そう願わずにはいられません。
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