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ブーレーズによる原典版のグラゴル・ミサ

シカゴ交響楽団自主制作盤の第19弾として “A Tribute to Pierre Boulez”と題された2枚組のCDが限定発売されました(タワーレコード札幌店にて\6990で入手)。これは1991年~2000年におけるブーレーズのライヴの記録であり、彼としては非常に珍しいレパートリーであるヤナーチェクのグラゴル・ミサが収録されています。

添付のライナーノートに収録されたインタヴューによると、ブーレーズのヤナーチェクへの関心は最近のことで、「田舎のドヴォジャーク」のような初期の作品には興味はなかったが、歌曲集「消えた男の日記」を知り印象が一変した、ヤナーチェクには類を見ない独創性がある、と述べています。

A Tribute to Pierre Boulez
 ・バッハ(シェーンベルク編):前奏曲とフーガ《聖アン》
 ・ブーレーズ:ショルティの80歳の誕生日のためのファンファーレ
 ・マーラー:リュッケルトの詩による歌曲より3曲(独唱:ヴァン・ダム)
 ・R:シュトラウス:交響詩《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》
 ・メシアン:キリストの昇天
 ・ブーレーズ:弦楽合奏のための書
 ・ドビュッシー:《聖セバスティアンの殉教》交響的断章

 ・ヤナーチェク:グラゴル・ミサ
 Elzbieta Szmytka(S),Nancy Maultsby(MS),Stuart Neill(T),
 Nathan Berg(B),David Schrader (Or)
(2000.11.2&4 録音)

以上、ピエール・ブーレーズ指揮 シカゴ交響楽団

今回聴いてみて、まず驚かされたのは、通常演奏されるものとは異なる原典版によっていることです。

グラゴル・ミサは作曲者自身により何度か改訂され、原典版から通常演奏される版へ書き直される過程で全体に大分すっきりした響きに変質しています。これは作曲者の本意でなく、当時の演奏水準を考慮した結果だったようです。原典版の主な相違点としては①末尾のイントラーダが冒頭でも奏されること、②序奏、Gospodi pomiluj(キリエ)におけるリズム指定の変更、そして③Věruju(クレド)のイエス受難の段に奏されるオルガンソロの合間に小太鼓と3台のティンパニ(!)を伴うグロテスクなオーケストラが対話的に挿入されていること等があげられます。

これまで原典版による録音はマッケラス/デンマーク国立放送交響楽団(Chandos)の一点のみであり、今回のCDには版について何の表記もなかったので全く嬉しい驚きでした。しかし、考えてみれば、自身も作曲家であるブーレーズが、ヤナーチェクの意思を尊重し、より個性的な響きに満ちた原典版を選択したのは必然のように思われます。

ブーレーズといえば、つい先日もバルトークのピアノ協奏曲全集を聴き、大変感銘を受けたところでした。これは私の大好きな曲で、まずは土臭く透徹した響きのオーケストラと打楽器的なピアノをイメージするのですが、この演奏では曲ごとにピアニストとオケを替えることで、より多様な魅力を引き出していました。ピアノもオケも音色と響きの質感が実に多彩で、バルトークから今まで気がつかなかったラベルのようにラテン的な色彩さえ感じ驚いたものです。

このようなブーレーズの傾向は、このグラゴル・ミサの演奏にも現れています。あのブーレーズがヤナーチェク?しかもグラゴル・ミサから?と当初大いに訝り、ミヒャエル・ギーレンのようなクールで分析的な演奏を予想していましたが、良い意味で裏切られました。

まず特徴的なのは、比較的ゆったりとしたテンポでヤナーチェクの個性的な響きの豊かさと色彩感を十分に味わえるようにしていること。その分、マッケラス盤(チェコフィルとの慣用版による演奏)に聴かれるような、粗野な熱狂の魅力は減少していますが、各声部が明晰で、曲のすみずみまで潤いのある響きで鳴っており、自然崇拝のカンタータであるこの曲のスケール感を一層増しているように感じました。作品への共感にみちた本当に美しい音楽です。指揮者の要求に応えるシカゴ響の上手さはこの曲に限らず格別。独唱者、合唱、オルガン奏者ともに優秀です。

この録音はグラゴル・ミサのほかにも自作やドビュッシー、マーラーなどが収録されており、どれもライブならではの魅力に溢れています。ブーレーズは既に80歳になり、ますます円熟を深めているようですが、今後は是非、シンフォニエッタやタラス・ブーリバの演奏も期待したいところです。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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