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ラドミル・エリシュカという「奇跡」

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日本の主な音楽評論家が加盟する団体(一社)ミュージック・ペンクラブ・ジャパンは、札幌交響楽団と名誉指揮者ラドミル・エリシュカに対して「第30回 ミュージック・ペンクラブ賞」特別賞を贈呈した。4月23日には札響事務局の方やマエストロのマネージャーが出席し授賞式が開かれた。この受賞は両者の長年に渡る共演が高く評価されたもので、受賞理由には「42回の共演を重ねて2017年10月の最後の演奏会を開くまで奇跡の名演を繰り広げてこられました」と記されている。

「奇跡の名演」。プロの物書きの団体にしては陳腐な表現のようだが、エリシュカ&札響の歩みはまさに「奇跡」としか言いようのないものだった。

マエストロが昨年3月の公演を終え、帰国後に肺炎を患ったのが4月。そしてドクター・ストップの中、マエストロの強い希望により最後の日本公演が6月に通知され、10月に再来日し大阪フィル定期でドヴォジャークの「テ・デウム」と交響曲第6番、札響定期でR.コルサコフの「シェラザード」が演奏された。これもまた陳腐な文句になるが長く語り伝えられるような「伝説の名演」だった。

あれから多くの方がこの最終公演について熱く語ってきた。僅か半年ばかり前のことだが、私にはもう何年も前の出来事のように思える。まったく夢のようだ。

エリシュカの日本での成功は、単に「マエストロ」が客演して名演を成し遂げたということに留まらない。エリシュカに劣らず優れた指揮者は多く、名演もまた多い。それでもなおエリシュカの成功は「奇跡」「伝説」として語られるべきものだと思う。ミュージック・ペンクラブ・ジャパンが、そこを正当に評価して下さったのはまことに有難い。

そもそもマエストロは来日前まで西側での活動歴がなく、チェコ音楽ファンの多い我が国ですら知名度は皆無だった。チェコ国内での玄人筋の評価は高く、多くの実績を積み、音楽界では重鎮と目されてはいたが、チェコ国内ですら一般に名の通った指揮者ではなかった。当人は英語が話せず、政治力も皆無。むしろ共産主義政権時代には敬虔なクリスチャンであったことから当局から睨まれていた。商業主義とも政治とも無縁で、1989年までは伝統と実力はあるが国際的には注目されていない地方オケ、カルロヴィヴァリ響を磨き抜くことに没頭していた。しかし、ビロード革命後に商業主義の波が押し寄せるとそのポストを失い、プラハアカデミーでもっぱら後進の指導にあたっていた。マエストロが日本でデビューするまでの15年間は指揮者としては大変不遇な時期だったといってよい。

なぜ、世渡り上手とはいえない「遅れてきた巨匠」のインディアン・サマーが日本で訪れたのか。それには、いくつかの幸運と良縁が重なったからだ。

その第一はマエストロのマネージャーを務めている梶吉洋一郎・久美子夫妻の献身と尽力だ。梶吉氏はもともと放送業界出身の方で、クラシック音楽に大変造詣が深く、チェコの音楽事情にも精通している。なにより本物を見抜く眼の確かな方で私もいつも教えていただいている。奥様はチェコ語の通訳者でもある。梶吉夫妻はマエストロの噂を聞きつけ、日本へプロモートし、マネージャーとして仲介する傍ら、パスティエルというインディーズレーベルを立ち上げ、手弁当でCDの録音・製作まで行った(※エリシュカ定期が年2回になってからは一方のブラームス交響曲チクルスはAltusレーベルが録音した)。とても採算が合う話ではなく、商業的な動機というよりは、マエストロの音楽と人柄に惚れ込み、いまや失われつつある戦前から受け継がれた至芸を後世に残すという使命感からであった。

そして札幌交響楽団との出会い。梶吉氏は全国のオケにプロモートをかけたが、その反応は当初芳しいものではなかった。無名の老指揮者を起用するのはオケとしても大きな冒険なだけにある意味当然であった。その中で、唯一興味を示したのが札幌交響楽団だった。

胃袋の大きな関東と違って、北海道でオーケストラを維持するのは並大抵の事ではない。札響は2003年に深刻な経営危機を迎え、存続も危ぶまれる程だった。その後、地域密着の巡回公演に力を入れるなど事務局と楽員が一体となって努力を続けて財務状態の立て直しを図り、2009年には遂に公益財団法人となった。エリシュカの2006年の札響デビューはそういうなかでの判断だった。

縁あってエリシュカ&札響の歩みを間近で立ち会い思ったのは、オケの実力というのは、楽員の技量は無論だが裏方の力が極めて大きいということだ。コンサートの企画運営からステマネ、ライブラリアンに至るまでがオケの実力。

マエストロのデビュー時から、札響の対応はマエストロに最良のコンディションで実力を発揮してもらおうという配慮が行き届いていた。それは単にビジネス上のVIP待遇とは全く異なるもので、梶吉夫妻の「マエストロの芸をなんとか残したい」という想いと一つだった。

例えば、マエストロの練習では通訳としてプロハースカ尚子氏が立ち会うのが恒例となったが、これは札響がまず取り入れたものだ。彼女はもともとチェコ在住のトロンボーン奏者で、マエストロの下で何度も演奏している旧知の間柄であった。そのため、練習ではマエストロの指示を的確に伝え、ムードメーカーとしても重要な役割を担った。客演する指揮者のために通訳者をわざわざチェコから呼び寄せるのは異例なことだろう。

また、マエストロにとって奥様の存在は大変大きかった。それは単に最愛の伴侶というだけでなく、マエストロの健康を厳しく管理し、必ず演奏に立ち会って歯に衣を着せぬ助言をするアドバイザーでもあった。札響は奥様の大切さを理解し最大限のもてなしをしたと思う。魅力的な奥様はファンにもお馴染みとなり、微笑ましいおしどり夫婦として好感された。最終公演でも事務局が用意したファンの寄せ書きの中心にプリントされたのは夫婦の写真であった。

指揮者はフィジカルな職業なので、老化と共に芸の深化はあったとしても指揮活動の負担は厳しいものになっていく。マエストロはスター指揮者でなければ引退という齢になってから来日し、札幌を本拠地とした。それがどんなに有難いことだったか。この14年間は札響の成長とともにマエストロの老いもあった。それが幸福に噛み合って相互に尊重し支え合う関係となった。

そしてエリシュカ&札響の成功は、音楽ファンに地方オケの実力を見直すきっかけを与えたと思う。例えば、ドヴォジャークの「新世界」交響曲など巨匠指揮者&有名オケによる録音が多数あるが、それらの中でもエリシュカ&札響の録音は世界水準の演奏だ。レコ芸の批評家投票でもウィーンフィルやベルリンフィル、チェコフィルによる歴史的名盤とも互角である。地元ファンの贔屓目でもマニアの偏愛でもなく、誰もが納得できる説得力を備えていると思う。スメタナの『我が祖国』など、バレンボイム&ウィーンフィルの演奏をドヴォジャーク・ホールで聴くプラハっ子と、エリシュカ&札響の演奏をKitaraで聴く札幌っ子ではどちらが幸せだろう。一概に前者と言えないのが音楽を聴く面白味で、多くの音楽ファンがそのことに気付いたと思う。実際、マエストロに師事したあるチェコ人演奏家が日本でマエストロの実演に接し感涙し、彼の演奏を本国で聴けないのは残念だと梶吉夫人にしみじみ語ったという。そして、これらの成功は一指揮者の人気にとどまらず全国のオケへの波及効果があったのではないか。エリシュカの名演に感激して地元のオケの定期に通い始めたという方を何人も知っているし、私もその一人だ。

現在、マエストロは奥様共々お元気で、プラハの自宅で指揮教本を執筆する毎日だという。4月6日に87歳の誕生日を迎えたマエストロは、9日にプラハのドヴォジャーク記念館で日本における指揮活動について講演した。マエストロはビデオやCDを交え、日本での14年間に渡る演奏活動について3時間近くも語った。この催しはチェコのドヴォジャーク協会が協賛しており、会場はほぼ満員。内容はやはり最も深い関係を築いた札響との話が中心だったそうで、最後のコンサートにおける練習風景、ゲネプロ、本番、終了後の貴重な映像が紹介されたとのことだ。

この講演会に出席されたプラハ在住の指揮者・音楽学者であるヘイグ・ウチジァン(Haig Utidjian)氏はフェイスブックで次のようにコメントされている。

「エリシュカ氏と日本との華々しいコラボレーションは、彼の引退間際から始まりました。その成果は、日本で最高のコンサートホールでの100を超えるコンサートと1ダースもの録音で、多くの賞賛と名声を得ています。しかし、何よりの成果は楽員との真に充実した相互関係、信頼と愛情なのです。

私たちは僅かなDVDとCDの録音から知るのみですが、めざましい技術的精度と明晰さに加え、稀に見る力強さと輝き、純粋さを備えた演奏だった十分な証拠がありました。その効果たるや全く息もつかせぬものでした!」

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やはり、国を超えても本質はちゃんと伝わっている。私はマエストロの築いた札響の評判が広く伝わって欲しいと願っている。エリシュカ&札響の世界水準の演奏が海外ではまだまだ知られていないのは残念なことだ。海外の知人にCDを贈ったり、下手な英語でネットで発信したりと私なりに微力を尽くしているが、ここはもう一段の展開を期待したいのだが。

それから、マエストロに関して、これまでの経歴、日本での活動記録等が纏まった本が欲しい。有名指揮者についてそうした著作は多いがエリシュカに関してはまだライナーノートと雑誌の記事くらいしかないのだ。それにマエストロが元気なうちに話を聞いて記録として残すべきだと思う。マエストロはチェコ音楽史の語り部としてもかけがえがない存在だ。バカラ、ターリヒ、シェイナ、アンチェル、スメターチェク、ノイマン、クーベリック、ビエロフラーヴェクの思い出を語れるチェコ人などもうマエストロ以外に残っていない。チェコスロヴァキアの特殊な政治事情に翻弄された演奏家の証言は興味深いものだろう。マエストロには、政府の特使としてチェコの楽団を連れてキューバを訪問しカストロやゲバラと握手したり、モスクワを訪れた際にハチャトリアンが奥様をすっかり気に入ってしまったとか、ドヴォジャークの「テ・デウム」を演奏した際に共産党幹部から宗教プロパガンダだと叱責されたとか、面白い逸話が沢山あるのだから。

加えてマエストロが多くの書き込みをしたスコアは、すべて札響に保管されている。これこそがマエストロが残した貴重な資産であり、専門家の研究分析を期待したいところだ。
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2017年のディスク12選

新年おめでとうございます。
今年も当会をよろしくお願いいたします。

昨年もマイペースに音盤を漁りました。あまりCD屋に足を運ばなくなったせいか話題盤(クルレンティスの悲愴、ツィメルマンのシューベルト等)は未聴ですが、けしてそれらに無関心なわけではありません。全ては日々徒然なるままのポチットによる収穫です。昨年は中途半端な安物買いを控えたので、振り返ると総じて長く座右における歩留まりがよい買い物だったように思えます。(以下、順不同)

1.J.S.Bach: Cantatas - The Complete Box-Set(56CD)
ジョン・エリオット・ガーディナー、イングリッシュ・バロック・ソロイスツ、モンテヴェルディ合唱団

ガーディナーとイングリッシュ・バロック・ソロイスツ&モンテヴェルディ合唱団によるバッハ没後250年企画「バッハ:カンタータ巡礼」でリリースされていた録音をまとめたボックスセット。思い切って購入しましたが、これがなにより良かった。一家に一箱、一生モノとはこのことです。

バッハのカンタータの多彩さが強靭な芯がある響きで際立ち、聴いていて飽くことがありません。流石、ガーディナーの手兵は「ソロイスツ」と銘打つだけはある名手の集団で、どれを聴いても合唱団が立派。指揮官の意が隅々まで行き渡っているよう。ソリストの歌手は皆素晴らしく、コジェナー・ファンのアイテムでもある。美しい録音。あと再録音となるマタイ受難曲も良かった。


2.H. Schutz: Die Gesamteinspielung Box.1 (11CD+DVD)
ハンス=クリストフ・ラーデマン、ドレスデン室内合唱団

NHKFM「古楽の楽しみ」、礒山雅先生の週はいつもポチットしてしまうのだが、これもその関連。シュッツの清々しい宗教曲を清々しい演奏で聴く幸せ。ドレスデンの教会の空気を感じる残響豊かな録音が美しい。これも一生モノ。


3.Gyorgy Kurtag: Collected Works for Ensemble and Choir(3CD)
ラインベルト・デ・レーウ、Askoシェーンベルク・アンサンブル 、オランダ放送合唱団

ルーマニア生まれの作曲家、クルターグ・ジェルジの作品集。クルターグはECMレーベルが良い録音を幾つもリリースしてきたが、この3枚組もまた記念碑的な名盤では。


4.Charles Koechlin: Orchestral Works(7CD)
ハインツ・ホリガー、シュトゥットガルト放送交響楽団、ユリアーネ・バンゼ

シャルル・ケクラン生誕150周年の記念BOX。ホリガーの音色に対する感覚は独特に鋭いけれど、それが音の魔術師ケクランの作品で最大限に発揮されている。


5.ドヴォジャーク:スターバト・マーテル(2CD)
ラドミル・エリシュカ、大阪フィルハーモニー交響楽団

マエストロの芸術の根幹には敬虔な信仰がある。マエストロの厳しい職業意識は信仰に基づいていて、だからこそ不遇な時期も生き延びてきたのだと思う。それによる宗教的慰藉のようなものは交響曲や管弦楽曲にも時折滲むが、最もストレートに表れるのはこのスターバト・マーテルだろう。ドヴォジャークにとってもマエストロにとっても特別な作品だ。この曲を札響に次いでマエストロと縁が深い大フィルが共感をもって全身全霊で演奏した特別な記録。まるで大きなものが降りてくるような終曲に感涙必至。一人でも多くの方に聴いて欲しいエリシュカの真骨頂。


6.ブラームス:交響曲第1番、シューベルト:交響曲第5番、メンデルスゾーン:フィンガルの洞窟(2CD)
ラドミル・エリシュカ、札幌交響楽団

地元ファンとして、しみじみ札響は立派なオケになったと思う。数ある歴史的名盤と比べても遜色なく、札響の名手の個性が十二分に発揮されているのが嬉しい。同時期にリリースされたチャイコフスキーの交響曲第5番も甲乙つけがたい。


7.プロコフィエフ: ピアノ・ソナタ全集(3CD)
ステファーヌ・ギンズビュール

知的に醒めていながらも尖がった演奏。プロコフィエフのピアノ・ソナタ全集は意外に種類がないのでは。


8.Monique Haas - Milesstones of a Legend(10CD)
モニク・アース

アースは、これまでドビュッシーをよく聴いていたが、モーツァルト、ハイドン、ラベル、バルトーク、ストラヴィンスキー等、様々な録音が楽しめた。どれも品格ある演奏。ミュンシュ、イッセルシュテット、フリッチャイ、ロスバウト、ヒンデミット(!)、ロスタルとの貴重な歴史的録音が含まれている。夫である作曲家マルセル・ミハロヴィチの作品は初めて知った。なによりお気に入りはハイドン。


9.Beethoven: Piano Sonatas(2CD)
アンドル・フォルデス

ハンガリーの名ピアニスト、アンドル・フォルデスが残したベートーヴェン録音の初CD化。引き締まった響きの精巧な演奏。


10.The Maryla Jonas Story - Her Complete Piano Recordings(4CD)
マリラ・ジョナス

ポーランドのもう一人の「戦場のピアニスト」、マリラ・ジョナス。9歳でデビューし、パデレフスキに師事した天才少女としてキャリアを始めるも、ナチスのポーランド侵攻によって強制収容所に収監される。数週間後、自分の演奏を聴いたことがあるドイツ人高官の手助けを得て脱走、徒歩で数か月かけてベルリンのブラジル大使館まで325マイルを逃亡し、リスボン経由でリオデジャネイロへ亡命した。その後、傷心のジョナスは演奏活動を中断したがルービンシュタインに励まされて復帰したという。そんな歴史的逸話を抜きにしても味わい演奏で、慈しむような共感が溢れるマズルカが胸に沁みる。


11.テレマン: 無伴奏フルートのための12のファンタジア(全)
フランソワ・ラザレヴィチ

フルート・トラベルソの柔らかな響きが心地よく、惚れ惚れするほどに巧い。やはりテレマンはいいなぁ。


12.Crazy Crazy (feat.Charli XCX & Kyary Pamyu Pamyu)/原宿いやほい
中田ヤスタカ 、 きゃりーぱみゅぱみゅ

「原宿いやほい」は全然売れなかったので注目されなかったが、KPPを代表する名曲だと思う。ヤスタカはKPPのキャラ・声質を活かすのが本当に巧い。今回は特に歌詞が天才的。こんな含蓄のある、それでいてほとんどナンセンスに脱力した詞はヤスタカ以外絶対書けない。色々あった昨年を支えた応援歌。

CD2017

チェコ文化研究家、故関根日出男先生のこと

2017年ももう終わる。今年、自分にとって最も大きかったのは長年私淑してきた当会顧問のチェコ文化研究家、関根日出男先生が1月18日に亡くなられたことだった。先生とは昨年から、11月に日生劇場で上演されるドヴォジャークの歌劇『ルサルカ』の対訳解説書を作成していた。この本は、先生が亡くなられた後に完成し、日生劇場の公演にも間に合ったのだが、それでも「先生も草葉の蔭でお喜びでしょう」という穏やかな気分ではなく、複雑で苦い思いも残る。今まで追悼の記事を書けなかったのもそのためだ。だが何も記さずは年を越せないだろう。

関根日出男先生に初めてお会いしたのは1997年12月、東京交響楽団がヤナーチェクの歌劇『利口な女狐の物語』をセミステージ形式で上演した時だった。これがその後、2009年まで続く東響ヤナーチェク・オペラ・チクルスの皮切りだった。思えば、もう20年にもなる。1998年でこの作曲家の著作権が切れ、その後、ヤナーチェクのオペラ上演が世界的に盛んになる節目の年、インターネットを通じて知り合った音楽仲間のオフ会で、ピアニストの沢由紀子さんより紹介された。私がそれまで得てきたチェコ音楽の知識はもっぱら佐川吉男先生か関根日出男先生によるものだっただけに大変光栄で初めは緊張したが、互いにヤナーチェクについて語り合ううち旧知の仲のように打ち解けた。先生は北海道と縁が深く、若い頃、北大で医学博士を取得し、以前、私が赴任していた近隣の炭鉱街、上砂川で研修医をされていたなど道産子の私とは奇妙な縁があった。その後、その時の仲間内で日本ヤナーチェク友の会が結成された。先生には、その会の顧問となっていただいた。

当初、当会の先生との関わりは遠慮がちなものだった。なにしろアマチュア愛好家が結成した同好会には資金がなかったので、大御所である先生に軽々に原稿を依頼する訳にもいかないと思っていた。しかし、そんな懸念は全く無用だった。先生は、長年積み重ねてきた研究の成果を公にして残されることを強く望んでおられた。いつしか当会は「関根先生を囲む会」のようになり、先生の著作を軸にヤナーチェクのオペラ・声楽作品の対訳解説書を国内の上演機会に合わせて刊行していった。結局、当会はヤナーチェクの全てのオペラ・声楽作品の対訳解説書を完成することができた。

ヤナーチェクとマルチヌーは先生が特に傾倒し、我が国への紹介に力を入れた作曲家だった。先生は常々「ヤナーチェクの本領はオペラ。ヤナーチェクを深く理解するにはチェコ語の知識が必須だよ。」とおっしゃっていた。

ヤナーチェクのオペラ作品のほとんどは作曲家自身が作成した台本によっているが、決まった型に嵌まることを何より嫌った彼の文章は音楽同様に癖が強いため、その翻訳は容易でない。先生の翻訳は、語学的な正確さだけではなく、チェコの文化・歴史に対する深く幅広い理解に基づき、原作から楽譜に至るまで徹底的に読み込んだ上のものだ。分かりにくい言葉や慣用句に丁寧な注釈を付け、意味を補完し、繰り返しの多い台詞を適宜整理して、実用的な対訳にしている。これだけの内容の対訳解説は世界的にも稀だろう。

先生は、今のように海外情報を得るのが容易ではない時代から精力的に日本にチェコの文化を紹介された。雑誌の記事からコンサート、レコードの解説まで、チェコ音楽に関する日本語情報の多くは先生によるものだった。先生は共産主義時代から何度もチェコに渡り、現地で上演を観て、膨大な資料を蒐集するとともに、多くの方と知り合い貴重な情報を得たという。先生がチェコ語を学び始めた頃は、まだチェコ語日本語の辞書すらなく、ロシア語を学びチェコ語ロシア語の辞書を使われたそうだ。

先生のチェコ音楽に賭ける情熱、旺盛な知識欲は常人を超えたもので、その記憶力にはいつも驚かされた。その該博な知識はチェコ文化に留まるものではなく現代音楽から民俗音楽まで幅広く、文学・美術にも詳しかった。在野の研究者として強い自負心をお持ちだったが、それでいて権威的な態度とは全く無縁だった。むしろそういうものに対し抵抗感をお持ちだった。なので、あれだけの学識と実績をお持ちなのに威張ったり自慢したりするのを見たことがない。謙虚な人柄というより大き過ぎる知的興味の前に面倒な自意識を構う暇がないといった風だった。良い意味、淡白で温厚な人柄、関心を共有出来る相手には誰であろうと惜しみなく知識を分け与えていた。美意識は高く、趣味の好悪は明確だったが、価値観を他人に押し付けるようなところはなかった。そういうオープンな精神が緩くフラットな愛好家ベースの当会と上手く噛み合った。また、ご高齢にも関わらずパソコンやネットワーク技術にも柔軟に対応し、メールやウェブは無論、楽譜作成ソフトまで駆使していた。おかげで札幌在住の私とも遠隔で円滑に共同作業ができた。それなしでは本作りなど到底かなわなかった。先生の仕事を当会で形にして世に出せたのはお互いに幸福な縁だった。関根先生の下には学識と人柄を頼りにチェコ音楽に関わる演奏家、研究家、愛好家が集まっていたため、先生を通じて交友が広がったのも有難かった。

先生は晩年、かなり死を意識されていたように思う。だが、死への怖れより残された時間を活かし成果を残せるかに賭けていたのだと思う。特に2015年12月に刊行した『イェヌーファ』対訳解説書の増補改訂版の編集作業では鬼気迫るものを感じた。『イェヌーファ』対訳解説書は当会が最初に刊行したもので、在庫が切れたため当初は初版のまま増刷するつもりだったが、先生の強い希望で全面改訂し原稿を大幅に加えることにしたのだった。この際は、精神的に異様なほど高揚して夜を徹して執筆にあたり、「蝋燭の灯が最後に明るくなるようなものだよ。ヤナーチェクのように。」とおっしゃっていた。本当にハラハラしたものだ。その頃から先生は、自分が蒐集した本やCDを精力的に整理し手放していた。

先生と最後にお会いしたのは、2016年11月に開催された中島良史先生の企画によるオール・ヤナーチェク・プログラム公演だった。久しぶりにお会いした先生は、随分と痩せ細り顔色も優れず肉体的衰えが一目で分かる一方、精神的な衰えは全く感じさせず眼は爛々とし、どこか突き抜けた高僧のようであった。演奏機会が少ないヤナーチェクの女声合唱曲「フラッチャニの歌」を聴きとても喜んでおられたのを思い出す。先生は身体の衰えと共に気分に浮き沈みがあったようだが、この時には「人生の意味は、得ることよりも与えることなのだね。」としみじみおっしゃっていた。人生論のようなことをあまり語らない方だったので、この短い吐露は深く印象に残っている。

その頃、私は先生と既に『ルサルカ』の対訳解説書を編集作業をしていた。既に先生はメールで何度か体調不良を訴えられていたので、いつ何があってもおかしくないという覚悟はしていた。ただもう何があっても先生のお好きにしていただく方が幸せだろうとも思っていた。それでも散歩がてらに図書館へ通い毎日数冊本を読んでいるとか、ハプスブルク史に関する独語文献を調べているとか、トルコ語を学び始めたとかいう近況を伺うとまだまだ気力十分で大丈夫と安心していた。5月にムハの大作「スラヴ叙事詩」が来日するまで、11月の日生劇場公演までは絶対に持つだろうと奇妙に信じ切っていた。そして1月18日、雪降る中での通勤途上、奥様から電話で訃報を伝えられた時にはしばし呆然とした。前日ベットから落ち、骨折で搬送された先の病院で末期の肺癌が見つかり、そのまま集中治療室に入ったが間もなく亡くなったという。

その後、当会会員は無論、関根先生を慕うチェコ音楽仲間たちと共に『ルサルカ』対訳解説書の編集を行った。先生が亡くなった後の作業は困難だったが、なんとか最後の仕事を完結した。今は大きな荷を降ろした安堵感と同時に、先生の生前に完成できなかったことには悔いが残る。いかんせん私には学識や情熱が先生には遥か及ばなかった。

先生とのお付き合いは約20年に及ぶものだったが、長くも短くも感じる。これは、たまたま国内でヤナーチェクのオペラ上演が相次いだ期間だった。実生活ではまず接点がなかったはずの交友なので不思議な巡り合わせというよりない。この出会いが数年ずれていただけでヤナーチェクのオペラ声楽全作品の対訳解説書刊行などできなかった。奇しくもヤナーチェクに始まり、ヤナーチェクに終わる出会いとなってしまった。また、ごく個人的なことだが、先生の本業は耳鼻科の開業医だったので、私を長年悩ませていた先天的な鼻の不調にも有効な助言を下さり、大いに救われた。

当たり前だが人は死んでいく。偉業を成し遂げた個人でも生前築いたものの多くは散逸し残るものはごく一部だ。先生は生前、多くの資料や書き溜めた文書のファイルを収めたUSBを私に預けて下さった。正直、私の力では手に余るものだが、今後はこれらを無駄にしないよう私なりに微力を尽くしていきたい。 


関根訃報
チェコの高級紙Lidové noviny(2017/1/24)に掲載された関根日出男先生の訃報。「日本におけるチェコ文化の友、死す」とある。ノーベル賞文学者、ヤロスラフ・サイフェルトとの貴重な1枚が掲載されている。

2016年のディスク10+1選

新年おめでとうございます。
今年も本サイトをよろしくお願いいたします。

さて、以下は毎年恒例で綴っている昨年に聴いたディスク(CD or DVD)の私的十選です。今年はCDのみ。順不同、昨年発売のものに限らず旧録音も含んでいます。

近頃、無駄にモノを溜め込むことは、それだけで疲れるものだとつくづく感じます。生来の蒐集癖から気になるモノを無暗に集めてしまうのですが、蒐集欲と消化力のバランスを崩している感があります。

以前は吟味して1枚1枚選んでいたCDも今は箱買いが当たり前。手軽に一気に揃うのは有難いがコレクションは膨らむばかり。10枚組の箱が1枚分の価格で入手できても、聴くための時間がそれだけ工面できるはずもない。

そして、とにかく箱モノは置く場所に困る。新たに購入したCDは居間のバッファスペースに収容後、書斎のCD棚に保管しますが、そこに一度しまうと大棚から探すのが億劫になってしまう。そこでよく聴くものもバッファスペースに仮置きするが、その容量を超えるとあちこちにCDが散乱し家人の文句も多くなる。それなりに分類管理したりするのだが、こうも雑多だとどうもうまくいかない。

そんな訳でなるべく無用なCDは早めに処分し、一度しか聴かないような半端なものを避け、絞った購入を心掛けているのですが、何が半端かというのは聴いてみるまで意外に分からなかったりもする。世評が高い名盤がすぐにお蔵入りになることもあれば、ワゴンセールで買ったマイナーな録音をいつまでも聴いていたりもする。趣味嗜好も若い頃とは随分変わってきていますね。

そんな中であれこれ漁った末に長く聴けそうなCDがこれらの十選です。


1.イヴォンヌ・ルフェビュール大全集(24CD)

昨年はピアノ関連の箱モノに収穫が多かったが、なによりこれ。フレンチピアニズムの粋を堪能しました。ドビュッシーやラベルなどフランスモノは無論、ベートーヴェンも素晴らしい。


2.ユージン・イストミン/協奏曲、ソロ録音全集(12CD)
3.バイロン・ジャニス/コンプリート・RCAアルバム・コレクション(11CD+DVD)


知る人ぞ知る米国の名ピアニストの録音がまとめて入手できたのは有難い。ヒストリカル好きとしてはフランス、ドイツ、ロシア等の欧州の演奏家に惹かれがちだけれど、米国往年の演奏家も素敵だ。華やかで洒落ていて、ラフマニノフは特に愛されたレパートリーのよう。思慮深いイストミン、強靭な意思が漲るジャニス、個性は全く違うが、それぞれに時代の香気が漂う。


4.アントニオ・ペドロッティ・イン・プラハ~チェコ・フィルハーモニー管弦楽団との録音集(3CD)

以前、実家に「展覧会の絵」のLPがあった。誰の演奏か分からなかったが、このペドロッティ&チェコフィルの録音でした。指揮者のポートレートを見て思い出し、妙に懐かしかった。往年のチェコフィルの音色によるラテン作品が意外に嵌まる。


5.ヤナーチェク:グラゴル・ミサ、アヴェ・マリア、他 ガードナー&ベルゲン・フィル、ベルゲン・フィル合唱団、ベルゲン大聖堂合唱団、他

ノルウェイー勢の透徹したアンサンブルによるグラゴルミサ。見事な演奏です。


6.エリーザベト・シュヴァルツコップ SP期のEMI録音全集(5CD)

オリジナルマスターテープによるせいかスクラッチノイズがなく、驚くほど良好な音質です。シュヴァルツコップファン感涙。


7.『リコーダーの芸術』 デイヴィッド・マンロウ、ロンドン古楽コンソート(2CD)

マンロウの名盤がオリジナーレから復活。特にこのCDは書き下ろしのライナーノートの充実ぶりが凄い。


8.バッハ:ミサ曲ロ短調(新校訂版) ラーデマン&フライブルグ・バロック管、シュトゥットガルト・ゲヒンガー・カントライ(2CD)

バッハ研究は日進月歩で、耳慣れない演奏家による成果が続々誕生している。NHKFM「古楽の楽しみ」で礒山先生が随時紹介して下さっているので有難い。


9.ブクステフーデ:オルガン作品全集 ビーネ・カトリーネ・ブリンドルフ(6CD)

ブクステフーデのオルガン曲は、こんなにも色彩豊かなのか。まさに壮麗。バッハの地味なプロトタイプみたいに思っていたのだが。


10.チャイコフスキー:交響曲第4番、ドヴォルザーク:弦楽セレナード ラドミル・エリシュカ&札幌交響楽団

「悲愴」もそうだったが、エリシュカのチャイコフスキーは、男のパッションを感じさせる硬派な音楽になっている。札響の奮闘に拍手!


プラス1:清水靖晃:NHK 土曜ドラマ「夏目漱石の妻」オリジナル・サウンドトラック

傑作ドラマのサントラ。清水靖晃によるバッハの編曲モノも愛聴している。どれも独特にほのぼのした温かみがあって気に入っています。

無題

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

エリシュカ&札響との10年

チェコ音楽マニアを自認しているのだが、当会会員のKさんから「ラドミル・エリシュカという指揮者を知っているかい?」と聞かれた時には、その名前すら耳にしたことはなかった。ネットで検索してもほとんど情報がない、目ぼしい録音も見つからない。小国チェコにそんな大指揮者が埋もれているとは信じられなかった。

その後、件のマエストロが来日し、NHKラジオの公開収録に登場することとなった(※オケは東京フィルと名古屋フィル)。それは限定的なお披露目だったにもかかわらず聴衆にも楽員にも好評で、反響を呼んだ。しかし、無名に近いマエストロが我が国のオケの定期演奏会に客演するのはなおハードルが高かった。

そんな中、いち早くエリシュカを評価したのは札幌交響楽団だった。多くのオケから客演を断られる中、札響の音楽監督だった尾高忠明が、これは畏敬すべき音楽家だと見抜き即決したという。

2006年12月の札響定期デビューはセンセーショナルな成功を収めた。1日目の演奏が評判を呼び、2日目のチケットは完売。英語が話せないマエストロは、まだ楽員とのコミュニケーションに不自由があったが、ある楽員は初顔合わせからこれが真の「マエストロ」かと強い印象を受けたと語る。演奏会については2chなどにも絶賛の書き込みが溢れたのを覚えている(当時ツイッターはまだなかった)。その一方で無名の老巨匠の札幌での成功を懐疑的に見る向きも少なくなかった。かなり早い時期からマエストロに注目し積極的に紹介した音楽評論家は池田卓夫、岩野裕一、東条碩夫らであった。

この成功を受けて札響は直ちにマエストロを首席客演指揮者に就任させた。この決断も早かった。就任会見で「札響のよいところは?」と聞かれたマエストロは「楽員が時間通りに練習にきて、ちゃんと予習をしてくれること」と答えた。社交辞令の全くない答えにずっこけたものだ。

マエストロはそれまで長く不遇な時期を過ごしていた。敬虔なクリスチャンだったため共産主義政権の覚え目出度い人物ではなかった。プラハより政治的に寛容なブルノの音楽院に進んだのもそれが理由だった。西側で知名度が低かったのは、西側向けの看板音楽家を政権が決めていたことと、マエストロがチェコ語とドイツ語しか話せなかったことによる。ただし、国内や東側では演奏旅行を行うなど評価は高かった。共産主義政権時代は、宗教曲の公演などに関して思想的制約はあったものの、音楽家の生活は保障されており、公演の頻度も高かったという。そして指揮者が一つのオケと深く長く付き合うのが普通のことだった。1989年のビロード革命により民主化が実現すると、チェコ音楽界にも資本主義の波が押し寄せ、環境は一変した。マエストロも含めチェコ人指揮者の多くは失職し、その後釜に西側の指揮者が座った。

マエストロは、その後、プラハアカデミーの指揮科で教鞭をとり、フルシャやネトピルなど次世代の育成に努めた。そして既に70歳を過ぎ、スター指揮者でなければ実質引退の齢に縁あって日本に来た。私はたまたまその縁と近い所にいたため、素人愛好家ながらマエストロと親交を結ぶことができた。

マエストロが日本に来て驚いたのは、演奏家のモラルの高さと熱意、聴衆の熱心さだったようだ。本国では「時間通りに練習にきて、よく予習をしてくれること」すら満たされない現場も数多く踏んできた。チェコのオーケストラ関係者にマエストロの評判を聞くと「毀誉褒貶」という。音楽的に高く評価されている一方で、お仕事として割り切って生活している楽員は昔ながらの綿密な練習に閉口するらしい。また、チェコでは演奏会の模様がメディアに活発にとりあげられたり、聴衆の反応がホール以外で現れたりすることはあまりないようだ。日本人がチェコ音楽に深い関心と理解を示していることも驚きだった。

マエストロはこれまで培った芸を残すため録音を切望していた。札響との1枚目のCDが出た時には感激して「神様がお許し下さるならば、ドヴォジャークの後期の交響曲の録音を完成させたい」としみじみ語っていたという。

神様は慈悲深い。「遅れてきた巨匠」は、いまや日本中のオケに客演し成功を収めている。特に2009年のN響定期に客演し、その模様がテレビ放映された時に名声は全国に知られ評価が固まったと思う。11月には12枚目のCD(※12枚のうち11枚が札響との録音)が発売された。これで後期交響曲や交響詩集等、ドヴォジャークの主要作品、スメタナの『我が祖国』、ヤナーチェクの『シンフォニエッタ』『タラス・ブーリバ』、それに知る人ぞ知る傑作、ヴォジーシェクの交響曲(!)と、チェコ音楽定番の名曲をほぼ録音し終えて、現在、チャイコフスキーとブラームスの交響曲の録音が進んでいる。

これらの録音は、この10年間の札響の成長記録としても貴重なものだ。この成長は、エリシュカに限らず魅力的な指揮者を迎え、質の高い演奏を重ねてきたことによる。もともと名手が多いオケではあるが、明らかに音量が増し、響きが豊かになり、アンサンブルの精度が上がったことにより表現の幅が広くなった。初期の録音も遜色あるものではないが、近頃の録音は特に素晴らしい。

エリシュカCD2016


今回のCDに収められたドヴォジャークの弦楽セレナードを聴くと、エリシュカ&札響コンビの歩みを思いしみじみしてしまう。このボヘミアの歌心が染み渡ったような弦楽アンサンブルの素晴らしさ。感傷に流れず、暖かく繊細な共感に満ちている。この時の公演の後、マエストロを訪れると飛び掛かるように私の手を握って、「この弦楽セレナードは、本当に本当に難しい曲なんだよ!」とおっしゃっていたのを思い出す。

私が一つだけ残念に思うのは、マエストロの日本での活躍が本国チェコも含め海外ではまだ十分知られていないことだ。紹介のため海外の知人にCDを贈り、大変好評を得ているのだが。マエストロのドヴォジャーク解釈は、ターリヒ、ノイマンやクーベリックに続く世界標準になりうるものだと思う。

昨年、チェコの作曲家スデニェク・シェスターク博士にCDを贈ったところ、こんな返信をいただいた。チェコ人から見てもエリシュカ&札響の達成は驚きのようだ。

「私はこのCDを数名の友人に聴かせて、誰が指揮し、どこのオケが演奏しているか当ててもらいました。皆、例外なく著名なオケだと思いました。そして私がこれはエリシュカ氏と札響による演奏だと明かすと皆がどんなに驚いたことか!」

マエストロは現在85歳。仲の良い奥様とともに益々元気いっぱいである。聴衆から愛され、オケの楽員から尊敬を集め、自らの芸に打ち込んでいる。我が街、札幌との不思議な縁を思うと感慨深いものがある。
プロフィール

Pilsner

Author:Pilsner
発話旋律 "Speech Melody"
日本ヤナーチェク友の会公式サイト管理人Pilsnerのブログ
チェコ音楽を中心にした音楽雑記帳です。
The blog by the chief manager of Janáček Association Japan
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